生きるチカラの強い女性へ

処方箋24 江戸の姐さんに、ときめいています。

文:ひきた よしあき / 写真:カンパネラ編集部 05.23.2019

仕事一辺倒でキャリアを重ねるのはもう古い? それよりも大切な家族と一緒に豊かな時間を過ごし、人生を謳歌する女性が少しずつ増えています。名スピーチライター・ひきたよしあきさんが、スマートで力強い女性たちに会い、その魅力を探ります。第24回は、色香ただよう江戸っ子姐さんのメッセージをのせた「姐さん日記」を書き続けるアートディレクター・デザイナー/イラストレーターで日本舞踊師範の力石ありかです。

酸いも甘いもかみわけた、色香ただよう姐さんが、振り向きざまに言い放つ。

「いつまでグジグジ言ってんだい」

語勢はあるが、火照った頬、鬢のにおいが、あだっぽい。

「オトハル」(一般社団法人オトナ思春期をデザインするプロジェクト)に連載中の「姐さん日記」。眺めていると、日々の暮らしに山椒がピリっと効いてくる。

「そんな時は なーんも しなさんな」
「いつになったら ヒマになるのさ」
「お前サン、ためらうなんて100年早いよ」

こんな一言に、「下手に励まされるよりこの姐さんに叱られた方が、うれしい」

という声があがる。

日本の伝統と世界文化を行き来する

作者は力石ありかさん。

まるで、「姐さん日記」から飛び出てきたように華がある。東京の日本舞踊師範の家に生まれ、初舞台の立ったのは3歳。

しかし、そこからがすごかった。

父の転勤でパキスタンへ。彼女の人生の舞台は、がらりと変わった。

「アメリカスクールに通っていました。アメリカ人にオランダ人、裕福なパキスタン人もいます。友だちの家に遊びにいくと、宗教、文化が全く違いました」

日本の伝統と世界文化を往来し、やがて、クリエイティブにめざめていく。

高校で「まんが研究会」。個人の活動では友人と文化祭で2年続けて空間アート「母胎回帰」を発表。写真と絵と言葉と立体アートの世界だった。大学では、Macを用いてイラストを描きはじめた。常に何かをつくり、発信したい気持ちがあった。

「アパレル系の企業に勤めてから、仕事はブランドの担当者として通販カタログの編集とプレスをしていました。

その後、Macに覚えがあるため店頭POPやWEB制作まで任されるようになりましたが、カタログ制作で知り合った、外部のクリエターの方々を見ているうちに、私も制作する側に回りたいと思って独立しました」

祖母、母の稽古場で日本舞踊を習いつつ、ファッション、ジュエリー、化粧品、京都のご門跡寺院のポスターやご朱印帳、つづれ織り小物の図案などを次々と手がける。

力石あかりさんがイラストを担当した『波風立てない仕事のルール』(きずな出版)と「姐さん日記」日めくりカレンダー(お求めはこちら

人の心を動かすのは「色気」かもしれない

力石さんの創り出す世界に、なぜ引き込まれていくのだろう。そんなことを考えているとき、彼女の口からこんな言葉がこぼれた。

「私を魅了するアートを考えてみると、何かしらの色気を感じている気がします。だから心が動かされるのかも知れません」

「色」は江戸の褒め言葉。男と女が至福の関係であるために、しっぽりと、しどけなく、そらしたり、きめたり、だましたりしながら深まっていく。

姐さんの言葉を借りれば、

「味わってるかい? 今ここ、この瞬間(とき)を」

となるのだろう。

「若い頃の中村福助さん、七之助さんの演じる女が好きです。艶っぽくて、気が強くて、やさしくて、はすっぱだったりする。男に囲われていてるのに間男を引きずりこんだりもして……。そんな江戸の姐さんに、なぜかときめいてしまいます。『憎めない色気』があります。そんな日本の粋な色気を、日舞でも『姐さん日記』の世界でも届けていけたら」

と語る力石ありかさんを見ていると、彼女のこんな言葉が浮かんできた。

「楽しいことでいっぱいにおしよ。嫌なことで頭をいっぱいにするほどお前さんは暇じゃないのさ」

色の香に、すっぽり包まれた至福の時間。昼間から、一杯やりたくなった。

ひきた よしあき
1960年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学法学部卒業。博報堂クリエイティブプロデューサー、スピーチライター。学生時代から第8次「早稲田文学」学生編集委員、NHK「クイズ面白ゼミナール」のクイズ制作などで活躍。84年(株)博報堂入社。クリエイティブディレクターとして数々のCM作品を手がける。また、明治大学をはじめ多くの大学で講師を務める。15年、朝日小学生新聞でコラム「大勢の中のあなたへ」、コラム「机の前に貼る一行」を連載。著書に『あなたは言葉でできている』(実業之日本社)、『ゆっくり前へ ことばの玩具箱』(京都書房)がある。
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