食文化・萩原社長のお薦め

秋が旬のうまい鍋 黄金鱧(ハモ)のしゃぶ&すき

究極の“出合いもん”は、丹波のマツタケ 【「鍋パ」連携企画】

文:萩原章史/写真:八木澤芳彦 09.29.2016

冬眠前の淡路島近海の鱧(ハモ)は、餌をしこたま食べて、黄金色に輝く「黄金鱧」となる。特に古事記にも登場する国生みの舞台、淤能碁呂島(オノゴロジマ)とも伝えられる沼島(ヌシマ)周辺は、鱧漁の本場。“日本の生まれた地”ともいわれる場所で獲れる鱧は、まさに別格なのだ。

「鱧しゃぶ」と「鱧すき」どちらもうまい、今が旬の鍋

 1958年(昭和33年)に大阪・黒門市場に店を構えた「黒門丸一」の主人、由井政伸さんの生け締め・骨切りの技を施された鱧は、究極の鱧料理となる。特に鱧しゃぶは、多くのリピーターがいる人気の鍋だ。また、水揚げ地の淡路島では、特産の玉ネギと一緒に鱧すきにするのが定番。南4.6kmにある沼島は、鱧すきの鍋発祥の地と伝えられる。鱧しゃぶが上品な酒のさかなとすれば、鱧すきは、ぜいたくなおかずだ。

鱧の鍋では、煮過ぎは禁物

いにしえより日本人が信じる鱧の力

 鱧という漢字が示す意味は、実は日本独自のもの。中国語では鱧の文字はライギョを示し、ハモは「海鰻」と書く。古来、日本では鱧を「ハム」と読み、733年(天平5年)完成とされる出雲国風土記に、「すなはち、年魚(アユ)、鮭、麻須、伊具比(ウグイ)、なよし(ボラの小さいもの)、鱧等の類……」などと並んで記述されるほど、古くから日本人は鱧を食してきた。

 魚へんに豊と書く漢字を当てたのは、強いものの象徴である蛇(ハミ)から転じ、どう猛で美味で人々を豊かにする、魚としての高い価値の証しなのだと思う。京都まで生きたまま運べるほど生命力が強い鱧は貴重とされ、かつ、非常に美味なことから、関西では鱧食文化が根付いた。ここ15年ほどで、関東を含め全国的に鱧食は広がってきたが、まだまだ関西の比ではない。それほど、関西での鱧の地位は高い。

生け締めされた淡路島海域の黄金鱧。光っている
伊東食堂