BAR CAMPANELLA

パターン化している刑事役、そりゃやりたくない――俳優・北村有起哉さん

舞台『BENT』、主演映画『太陽の蓋』といま波に乗っている北村有起哉の役者観

カンパネラ編集部/photo by 鎌田雅洋 07.07.2016

「BAR CAMPANELLA」――ここは東京・表参道の青山通り付近にあるバー。エグゼクティブなビジネスパーソンや各方面のスペシャリストたちが夜な夜な集い、「大人の会話」を楽しんでいる。今回のゲストは、この7月に舞台『BENT』、長編映画初主演となる『太陽の蓋』の公開と、まさに波に乗る俳優の北村有起哉さん。名俳優といわれた父を持ちながらも、劇団には所属せず、一人でコツコツと仕事を増やしていった北村さんの役者人生――。カンパネラ編集長の瀬川明秀が迫る。

一度幕が上がったらもう止められないスリル

瀬川:舞台『BENT』が7月9日に始まり、長編映画初主演となる『太陽の蓋』が7月16日に公開されますが、いま映画や舞台、ドラマで北村さんを指名する製作者が多いと聞きました。また「お酒が好き」と伺っているのですが、いまは飲むひまもないくらいお忙しいんじゃないですか?

北村:そんなことはないです。いまはBENTの役づくりで体を絞っているので、夜は、ビール系であればカロリーオフのものとか、チューハイでもゼロのものがあるじゃないですか、それを飲んでいます。そうしていい感じになったところで、台本を読み始める。そのときにはウイスキーを飲み始めるんですけどね。

瀬川:台本がツマミですか?(笑)

北村:でも、いまは量はちょっとずつで、ゆっくりなんですね。本当に何も予定がないときは、若い頃のように飲むこともありますけど(笑)

北村有起哉さん(左)と「BAR CAMPANELLA」のホスト・瀬川(右)

瀬川:飲むときは家が多いんですか?

北村:はい。子どもが1歳半で、生活スタイルがガラっと変わっちゃいましてね。うちの嫁(女優の高野志穂さん)もお酒が好きなので、以前はよく焼鳥屋やバルに一緒に飲みに行ったんですけど、もう99%できなくなりました。たまにご褒美として子どもを預けて、家の近くの焼鳥屋に行くんですけど、子育てで忙しいですからね。だからすっかり、家で飲むようになっちゃった。

瀬川:イクメン俳優ですね。

北村:わりと仕方なくやっている部分もありますけど、でも子育てって、こんなに大変なこととは思わなかったですね。どの親御さんもきっとそうなんでしょうけど、子どもがこんなにかわいくて、大きな存在になるなんてね。いま本当に洗礼を浴びていますよ、いったい、どこでセリフを覚えればいいんだよっていうぐらい。

瀬川:そりゃ、時間も足りなくなりますよね。でも先ほど、ウイスキーを飲みながらセリフを覚えるっておっしゃってましたけど、飲みながらでも大丈夫なんですか?

北村:僕の場合、大丈夫です。単にセリフを覚えるというのであれば、効率悪いとは思います。でも、稽古の段階にもよりますけど、例えばここのセリフと、ここのセリフの間の行間を読むといったことがメインなので。ここには何があったんだろうとか、僕はここのセリフを、どういう心情でこのセリフを吐いているんだろうとか。そうしたことを、酔いながらのらりくらりやっているひと時っていうのが、わりと好きなんでしょうね。

瀬川:『BENT』は、ナチスの収容所で迫害を受ける同性愛者の話。けっこう重いセリフのやり取りになっていると思いますが。

北村:ええ。ちゃんと奥の奥からくるもの、そこからくるセリフとは……。セリフと格闘していくようなイメージです。でも、それも僕は苦じゃないんですよ、楽しい。たぶんそれがつらかったら、俳優をやってないんじゃないですかね。

瀬川:これだけあちこちから引っ張りだこになると、いろんな役を並行して演じることにもなりますよね。そんなときって、切り替えとか含めてうまくできるものなんですか?

北村有起哉さん(俳優)
1974年生まれ。東京都出身。高校時代に文化祭で上演した舞台をきっかけに演劇に興味を持ち、俳優を志す。1998年、舞台『春のめざめ』、映画『カンゾー先生』でデビュー。舞台、テレビドラマに多数出演している。2016年7月9日から上演の、ナチスドイツによる同性愛者への迫害を描いた舞台『BENT』では、同性愛者であるホルスト役として、マックス役の佐々木蔵之介さんと共演。東日本大震災発生から5日間を実話に基づいて描いた映画『太陽の蓋』(2016年7月16日公開)は、長編映画初主演となった。その他の待機作に、映画『オーバー・フェンス』(2016年9月17日公開予定)。

北村:もう自然とですね。しょうがないですよね。今回僕はBENTで、ホルストっていう役ですけど、そう呼ばれちゃったら、すぐに「はい、何だい」って返事しちゃいますよ。

瀬川:舞台でのお芝居は、日を追うごとに演じ方も変わってくるってよくいいますけど、北村さんの場合、舞台ではどんなことを意識されているんですか? 意識の変化を日々感じますか?

北村:お客さまの反応で、新しい答えが見えてくることが結構あるんです。つまり、1カ月ぐらい稽古場で悶々と考えながらやっていて、初日にお披露目したときに、「えっ、そこで笑いとか、反応があるんだ」って。逆に、稽古場ではあんなに盛り上がったのに、劇場ではシーン……。いわゆる楽屋落ちっていうやつなんですけど。そういう、ふたを開けてみないとわからないことがたくさんあって、それによって乗せられたり、逆にちょっと落ち込んだり。役を演じながら、第三者の冷たい自分がそういうことを冷静に俯瞰していて、いろんなことを発見し続けたりとかするんですね。

でも、お客さまの目の前でやる緊張感というか、一度幕が上がったらもう止められないっていうスリル。それは舞台にしかない醍醐味なので、これを味わってしまうとやめられない(笑)。カーテンコールとかね、やっぱり「やっていてよかった」って思いますよ。

ピルゼンアレイ