ミシュラン三つ星をほぼ食べ尽くした男の忖度のない美食論

台湾唯一の三つ星で「子アヒルの炙り焼き」と「アヒルがらのお粥」を食す

第11回 漢詩で「先知鴨」を学び、お粥を1人で平らげ大満足

文/特記なき写真:藤山 純二郎 03.28.2019

世界中のミシュラン三つ星レストランを追い求め、旅を続ける藤山純二郎さん。2019年1月には、中国・上海と台湾・台北の三つ星レストラン2軒を新たに訪問し、これで2018年版ミシュランに掲載されている三つ星レストラン全126軒のうち123軒を制覇しました。第11回は台湾の三つ星、広東料理「頤宮-ル・パレ」をご紹介します。

今年1月のミシュラン三つ星レストランをめぐる旅は、「中国の上海唯一の三つ星、台湾唯一の三つ星」を味わうことがテーマだった。前回に紹介した上海「ULTRAVIOLET by Paul Pairet」を満喫した2日後、台湾の台北駅に直結するホテル「PALAIS de CHINE(パレ・デ・シン)」へ向かった。ホテルとしても、ミシュランに館3(特に快適)で掲載されている。ただし、赤プリント(特に魅力的)ではなかった。


パレ・デ・シンの1階に馬の像があるが、それは馬が人類最古の交通手段となり、人類を遠い場所まで連れて行くことを可能にして、現在のホテルや旅館が発展したことへの記憶を忘れないようにするためのシンボルなのだという。

東方文化の細密な芸術性と西洋文化のエレガントさを融合させた価値観を提案していきたいというのがこのホテルのポリシーのようだ。その最上階に当たる17階にレストラン「頤宮-ル・パレ」はある。日本人にも知られたレストランで、スタッフによれば「毎日必ず日本のお客さんが来る」という。2018年3月に発表された初のミシュラン台湾版で三つ星を獲得している。最新の「地球の歩き方」にもミシュラン三つ星レストランとして掲載されている。

店内は、ヨーロッパ調と中国風をミックスしたイメージといったところか。円卓、半個室、完全個室があり、全体の造りは悪くない。席と席との間隔もゆったりしている。ただ、フジヤマとしては、ダークで少し重めな印象があまり好みではないというのが率直な感想だ。

三つ星広東料理店「頤宮-ル・パレ」の受付
受付から少し入ったところ
半個室のようになった席。左右に仕切りがある。店内はややダークで重い印象だが、 ソファー席は快適だった

メインディッシュをいただく前に漢詩で「先知鴨」について学ぶ!?

中国料理レストランの三つ星は世界で5軒しかない。香港に2軒、マカオに2軒、そしてこの台北の店。そのうちの1軒で、シェフは7年前の開店時にマカオから来た陳偉強(チェン・ウェイジァン)さんだ。中国料理の三つ星シェフに共通するのは、中国料理で世界初の三つ星に輝いた、フォーシーズンズホテル香港の「龍景軒」シェフを除き、表にはあまり出てこないタイプが多いということ。陳さんとツーショットを撮らせていただいたが、どちらかというと寡黙なシェフであまり会話は交わせなかった。そのあたりがフランスの三つ星シェフとは大きく違うところだ。


料理は広東料理を主体として新鮮な海の幸や旬野菜、飲茶点心などを提供する。コースメニューのほかにアラカルトがあるが、アラカルトの点数は65種類ほどだったが、これほどの中国料理の名店としては、それほど多いというわけではないように感じた。

食前酒?の赤ヴィネガー(紅酢)。酸味が快適で食欲が増進された

このレストランのスペシャリテの一つが「子アヒルの炙り焼き(Crispy Roast Baby Duck)」だ。「2日前までにご予約下さい」とメニューに明記されている。コースメニューにはこの料理が含まれていないため、フジヤマはアラカルトで事前に予約しておいた。事前予約の際に500ニュー台湾ドル(NT $、約1800円)を前払いした(キャンセルしても返金されない)。事前予約の時に、ついでにエッグタルトも予約しておいた。

「子アヒルの炙り焼き」が出てくる前に、まず鴨の由来などについて書いた紙を渡され、その内容を読んで驚いた。中国北宋の有名な詩人・蘇軾(そしょく、蘇東坡とも。1037-1101)の「恵祟春江晩景」が書かれていたのである。「竹林の向こうに桃の花 二三の枝に花が咲いている 春の江水の温もりを鴨がまっ先に感じとる……」といった意味の詩だった。この詩に由来する「先知鴨」は、「宣蘭で飼育された北京アヒルを厳選し、シェフが丹精を込めて焼き上げた」と書かれている。

子アヒルをいただく前に、なんと漢詩を読み、中国の文学に触れるとは正直思わなかった。中国料理の奥深さに思いを馳せたフジヤマだった。

「子アヒルの炙り焼き」。まる一羽分なのだが、骨が大きいため、それほど食べられる部分は多くない
目の前で食べやすい大きさに切ってもらえる。この料理人はシェフとは別人
「子アヒルの炙り焼き」にはレモンと胡椒の薬味も付いてくるが、それらを使わなくても十分においしくいただける

さて、店の料理人が目の前で料理バサミで切ってくれた「子アヒルの炙り焼き」。その味はといえば、皮はパリパリ、サクサクしていて、肉はしっとりジューシーな味わい。アヒル肉の滋味たっぷりでさすが三つ星のスペシャリテだけのことはあると感じ入った。

サービスもすばらしく、3回もフィンガーボールを持ってきてくれ、指先をきれいに洗えて実に食べやすかった。

ただしベビーダックのためか、一羽でも食べられる部分が少なめ。予約時の問い合わせには3〜4人分とあったが、多めの1人分といったところ。

家飲み酒とも日記