ミシュラン三つ星をほぼ食べ尽くした男の忖度のない美食論

仏伊独 新三つ星4軒の旅、アドリア海沿いの「ウリアッシ」で逸品料理を堪能!

第12回 仏アルプスの麓から南仏、イタリア、独ミュンヘンへと駆け巡る

文/特記なき写真:藤山 純二郎 06.13.2019

世界中のミシュラン三つ星レストランを追い求め、旅を続ける藤山純二郎さん。2019年4月末の大型連休にはフランス、イタリア、ドイツへ行き、2019年版の新三つ星3軒と、ようやく予約が取れた2018年版の新三つ星1軒を訪問しました。これで2019年版ミシュランに掲載されている三つ星レストラン129軒のうち120軒を食べ歩いたことになります。今回はフランス2軒、イタリア1軒、ドイツ1軒の三つ星レストランを一挙にご紹介します!

今年の大型連休中に時代は平成から令和に変わり、日本国内は新元号の話題で持ちきりだったと実は後で知った。もちろん令和ブームは予想されていたが、元号の変わり目にカウントダウンが行われるなど特に若者の間でのフィーバーぶりは知らなかった。

というのも、フジヤマは4月24日水曜夜に羽田空港を発ち、なんと3回飛行機を乗り継ぎ、合計15時間20分のロングフライトでパリに行ってフランス、イタリア、ドイツを巡って帰国したのが5月6日月曜祝日だったから。令和に変わる瞬間に日本にいなかったのだ。

10泊13日のこの欧州旅行では大衆食堂から三つ星店まで様々な店でバリエーション豊かな料理を食べたが、今回は2019年版の新三つ星であるフランス2軒とイタリア1軒、それから2018年版の新三つ星であるものの今回ようやく予約が取れたドイツ1軒の合計4軒の三つ星店のみを駆け足で紹介したい。

仏アヌシー「ル・クロ・デ・サンス」
自家菜園、それにプールも。地方のオーベルジュならではの贅沢

パリのリヨン駅から高速鉄道TGVに乗って約3時間40分、アルプスに囲まれたアヌシー湖畔の町アヌシーを訪ねた。駅名もアヌシー(Annecy)である。駅からタクシーで12分、料金は11.5ユーロ(約1400円)。お目当てのオーベルジュ「ル・クロ・デ・サンス(Le Clos des Sens)」は、町外れにある丘の中腹、とても牧歌的な雰囲気の場所にあった。

段々畑のような美しい自家菜園があり、いろいろな野菜を栽培している

このレストランの特徴は湖の魚と野菜を使った料理だけで、いっさい肉料理を出さないこと。3種類のコース料理のみで、アラカルトはない。結論から言うと、素材の味をストレートに出し、サービスがとてもよく、三つ星に値するすばらしいレストランだった。

シェフはフランス人のローラン・プティさん。客席からも見えるオープンキッチンにいたり、受付にも姿を見せたりするなど、オーナーシェフがいつも目配せをしているといった感じでお客に安心感を与える。


丘の中腹にあることから、レストランからの眺めも最高だった。夏場に使うらしいテラス席があり、まだ4月末とはいえ、テーブルに差す木漏れ日が美しく、とてもリフレッシュされるような印象だった。

段々畑のような美しい自家菜園があり、いろいろな野菜を栽培している。その一角にはプールも併設されている。こうした贅沢な造りはフランスの地方にあるオーベルジュならではのものだ。絶対にパリの三つ星店などでは味わえない自然の醍醐味を感じた。


マッシュルームの料理、「ずっと食べ続けていたい」

さて料理の話である。コースは5皿、7皿、10皿の3種類ある。フジヤマはその真価を見極めたいと思い、皿数の多い10皿210ユーロ(約2万7000円)のコースを頼んだ。フランスの一部のレストランの特徴だが、事前に料理の内容は公表していない。食べられないものやアレルギーについて要望を聞いてくれるものの、皿数と値段しかわからないのが一般的なスタイルである。

ベストの料理と感じたのは「サボワ地方のマッシュルームのサラダ」だ。マッシュルームを低温で火入れし、薄切りにして丸めて積み上げた中にカラメルムースが入っている。マッシュルーム自体のおいしさとコクが味わえ、マッシュルームのカプチーノと交互にいただくと、「ずっと食べ続けていたい」とそのおいしさに心底感動した。


「キャベツのタルト、フェラのスモーク」は、フェラという淡水魚の中にキャベツを入れてタルト状に焼き上げたもの。ソースもスモークしたフェラでつくられている。キャベツがソースとフェラの旨味を吸収、キャベツとフェラの相性のよさが絶妙で、これもベストの一品と呼ぶにふさわしかった。


メインディッシュは「マス、エスカルゴの白ワインソース」。マスの厚い切り身の上にエスカルゴがのり、ワイルドガーリックの白ワインソースがかかっていて、魚のおいしさがダイレクトに味わえる料理だ。エスカルゴのねっとり感に、7時間かけてつくったという白ワインソースのコクが加わり、本当においしい。


「自家製チコリとメレンゲのタルト」は、そこはかとない味、軽い味が印象的なデザートで、2019年版ミシュラン掲載のスペシャリテである。