ミシュラン三つ星をほぼ食べ尽くした男の忖度のない美食論

仏伊独 新三つ星4軒の旅、アドリア海沿いの「ウリアッシ」で逸品料理を堪能!

第12回 仏アルプスの麓から南仏、イタリア、独ミュンヘンへと駆け巡る

文/特記なき写真:藤山 純二郎 06.13.2019

イタリア・セニガッリア「ウリアッシ」
海水浴場にある世界唯一の三つ星レストラン

次に紹介するイタリアのレストラン「ウリアッシ(Uliassi)」は、今回の三つ星レストラン巡りで一番気に入った店だ。イタリアをブーツの形にたとえると、ちょうどふくらはぎの辺りに位置する。アドリア海に面したマルケ州のセニガッリアというリゾート都市にあり、宿泊していたフィレンツェから電車に乗り、ボローニャで乗り換えて3時間強かかる。

レストランの正面で。オーナーシェフのマウロ・ウリアッシさん(右)と妹のカティア・ウリアッシさんと記念撮影。海辺で紫外線が強いのでサングラスをしている

フジヤマが知る限り、ここは海水浴場にある世界唯一の三つ星レストランだ。セニガッリア駅から徒歩約10分、レストランの建物は海水浴場のあるビーチに対して斜めに立っている。一説には掘っ建て小屋的とも言われるが、たしかにその雰囲気があるものの、モダンで居心地のよさは抜群だ。

カラフルなセニガッリア駅の駅舎、さすが

オーナーシェフのマウロ・ウリアッシさんのファミリーネームから店名を取り、妹のカティア・ウリアッシさんが支配人的な役割を務めている。オープンは1992年だから、27年かかって三つ星を獲得したことになる。

実はこのレストランでビーチ側の席は2つしかなく、フジヤマはそのひとつで食事をいただくことができた。その眺めのすばらしさということで言えば、昨年6月に訪れたハワイ・オアフ島のレストラン「ミッシェルズ(Michel’s at the Colony Surf)」を思い出した。


舌平目、パスタ2品、アンコウ、鳩肉、どれも逸品!

今回訪れた三つ星レストランで唯一、ウリアッシにはアラカルトがあった。昼時の12時半、開店と同時に入店し、メニュー選択に40分かけて料理を注文! アラカルトのメニューがたくさんあるので、ゆっくりと時間をかけて楽しむことができるのだ。

結局、注文したのは前菜ひとつ、パスタ2品、魚料理、肉料理の5品。分量が多いと思ったのだろう、カティアさんが「じゃあ、ポーション、少なくするわね」と言うので、「いえ、フルポーションで」とフジヤマ。「東京からせっかくきたのだから」と言い添えると、カティアさんは笑っていた。


料理はすべてすばらしかった。先に紹介したフランスの2軒も、もちろんすばらしいのだが、料理の完成度という面では個人的にはウリアッシの方が上だと感じた。

前菜は舌平目とクレソンをほうれん草で上下から挟んだもの。舌平目の質の高さはフランスの「ポール・ボキューズ」のフェルナン・ポワン風に匹敵する内容で、すばらしくおいしい!

続いて、パスタの1品目。理想的アルデンテ(歯ごたえ)に茹でたスパゲティにグリルしたチェリートマトが適度な酸味とねっとり感を与え、さらにオリーブ油が優しくエレガンスな味に仕立てている。久々にすばらしいスパゲティを食べたという実感を味わい、舌平目の前菜とこのパスタだけでもこのレストランに来た甲斐があったと感じたほどだ。


ところがさらに続く。一回り大きなフジッローニにカラスミ、ピスターシュ、ローズマリーの入ったパスタは、前皿を上回るおいしさ。2019年版にスペシャリテとして掲載されている料理だ。フジッローニの理想的アルデンテ、たっぷりと贅沢なカラスミ、小豆状のピスターシュで食感にアクセントをつけ、ローズマリーで酸味をプラスしている。量もたっぷりで、ずっと食べ続けていたいと思わせる一品だ。


魚料理は地元マルケ州の郷土料理をアレンジしたものだった。もともと「ウサギのポタッキオ」と言えば、ウサギ肉をジャガイモやトマトなどとともに白ワインとオリープ油で煮込んだ料理だが、ここではウサギの代わりにアンコウを使っている。これほどおいしいアンコウ料理を食べたのは初めてだ。「イタリアでこれ以上の魚料理はない」と言われているのも納得がいく。


最後に食べた肉料理は焼き鳥ならぬ焼き鳩。ウリアッシは魚料理だけでなく、ジビエ系も得意と聞いていたので注文したのだが、それが大正解だった! レアで焼かれた串ざしの鳩肉の下に円形ポテト、オリーブオイル、バルサミコソースがあり、上には鳩の内臓がのっている。まさにメニューの英名通り、ワイルドピジョンをたっぷりと味わせようという趣向である。とにかくおいしいの一言。


串を出すという発想はもともとヨーロッパ人にはなく、これも日本の焼き鳥の影響を受けていると思う。フジヤマは毎月、東京・目黒の一つ星焼き鳥店「鳥しき」にお邪魔するが、池川義輝シェフに「焼き鳩もだしたらいかがでしょう」と言ってみたくなるほどの一品だった。そのくらいそのおいしさに感動したのだ。

オーナーシェフのマウロ・ウリアッシさん