ミシュラン三つ星をほぼ食べ尽くした男の忖度のない美食論

フランス・トゥーロン郊外の「クリストフ・バキエ」、真骨頂はニンニク風味の「アイオリ・モデルヌ」

第6回 フジヤマの「ミシュラン三つ星を追いかけてスペインとフランスを巡る旅」その3

文/特記なき写真:藤山 純二郎 06.25.2018

シェフのスペシャリテ「アイオリ・モデルヌ」は絶品!

それでは料理を紹介していこう。

まずはアミューズ。前菜の前の「お楽しみ」だ。5種類あり、右から左へ順番に食べてほしいという。一番右は、サバとマンゴーを載せたクラッカーで、じつにうまい。その隣りがセロリとカキのタルタルソース。それぞれの旨みがよく調和していた。その隣りにマトダイのフライ、ロックフィッシュのスープが並ぶ。その上にあるのが仔牛ハムのアンチョビ風。ピリ辛でなかなかうまい。

5種類から成る豪華なアミューズ

いよいよコース料理が始まる。バキエ氏の真骨頂は、何と言っても「アイオリ・モデルヌ」。アイオリというのはニンニクのことで、地元でとれた非常に質の高いタコなどの魚介類と野菜にニンニクソースをつけていただくもの。モデルヌといっているように、古風な重いソースではなくて、現代風に軽くてなおかつコクがあるソースに仕上げている。さすがスペシャリテと名づけるだけのことはあると思う。ニンニクソースは、このプレートが食べ終わってもパンにつけてもよく、足りなければ追加できるようになっているのがうれしい。フジヤマはもちろん、ソースを全部いただいた。

アイオリ・モデルヌ(Aïoli ModerneLégumes de nos maraîchers locaux, Poulpe de Méditerranée:アイオリ現代風、自家菜園生産の野菜、地中海産タコ)。タコなどの魚介類と野菜にニンニクソースをつけていただくスペシャリテ

地元の赤エビの料理もとても質が高かった。皿に透明な器をかぶせて保温された状態でテーブルに運ばれてきて、目の前でソースをかけてくれるのだが、このソースがとてもコクがあってうまい。エビもぷりぷりで何とも言えない食感なのだ。

地元の赤エビの料理(« Gambon écarlate »Juste snacké, la quintessence des têtes:赤エビスナック仕立て、頭のエッセンス)

マトダイの料理もすばらしい。地元の野菜と一緒に炒めたものを鍋ごとテーブルまで運んできて、目の前で皿の上にアレンジしてソースをかけてくれる。熱いうちにいただけるので魚の香ばしさがいちだんと引き立つ。見た目も味も楽しめる料理だ。

野菜とのコラボレーションが楽しいマトダイの料理

続いて登場したのが、唯一の肉料理、仔鳩の塩釜焼きだ。プレゼンテーションということで、岩の塊のような状態で運ばれてくる。もちろんそのまま食べさせるわけではなく、目の前で塩の塊を切り崩していく。すると中から仔鳩の肉が現れ、これを切り分けて皿にのせてくれる。

切り分けた仔鳩の肉の上に、膨らました中身が空洞のふかし芋を載せ、血入りソースをかけていただく。パリに元三つ星の「トゥール・ダルジャン」というレストランがあるが、芋を膨らませるのは、「トゥール・ダルジャン」の有名な料理「仔鴨のトゥール・ダルジャン風」と同じ。血入りソースをかけるのも、「仔鴨のトゥール・ダルジャン風」と同じだ。シェフのバキエ氏が「トゥール・ダルジャン」にオマージュを捧げているような気がした。

仔鳩の岩塩焼き(Pigeonneau au Sang « Excellence Mieral »Cuit en pâte à sel épicée, jus acidulé au vinaigre de myrte sauvage:仔鳩“エクセランス・ミエラル” スパイス風味の塩釜焼き、野生ミルテのヴィネガー入りの酸味あるソースで)。岩のような状態で運ばれてきて、目の前で塊を切り崩すと仔鳩の肉が現れる。これを切り分け、血入りソースをかけていただく

アバンデセールという、本デザート前のデザートを食べ終わったときに、店のスタッフが、「よかったら今、厨房へどうぞ。シェフにお会いになりませんか」と誘ってきた。そこで厨房に行くと、初めてシェフのクリストフ・バキエ氏と面会した。写真撮影に気軽に応じてくれ、気さくな感じのいい人だった。

厨房にてシェフのクリストフ・バキエ氏と

最後にメインデザートを紹介する。スフレ・ショー・カゼット、温かいスフレという意味だが、これもなかなかおいしかった。スフレの上につくりたてのチョコレートアイスクリームがかけてあり、その上にミックスナッツを砕いて載せてある。とても香ばしくて満足度の高いデザートだった。

メインデザートのスフレ・ショー・カゼット(Soufflé Chaud « Cazette »Crème glacée aux grains de Cafés Torréfiés:“カゼット”の熱々スフレ焙煎コーヒー豆のアイスクリーム)

クリストフ・バキエはフランスの南仏のリゾート地のレストランだが、パリの三つ星店に勝るとも劣ることなく、十分に三つ星の価値があると感じた。バキエ氏はMOFというフランス最優秀職人章という非常に権威のある称号を持っており、その実力は本物なのだ。

今回の連載はひとまずこれにて終了。だがフジヤマのミシュラン三つ星制覇の旅はまだまだ続く。またどこかでお目にかかりましょう。


藤山 純二郎(ふじやま・じゅんじろう)
会社員、料理評論家
東京都出身。幼稚舎、普通部、高校、大学と慶應義塾で学ぶ。祖父は日本商工会議所会頭や初代日本航空会長も務め、岸信介内閣の外相で大活躍した藤山愛一郎氏。1989年から『ミシュランガイド』(ミシュラン社)を片手に現在まで29年間、世界の三つ星レストランを食べ歩き、2017年版のミシュラン三つ星レストラン119軒中、118軒を制覇。現在、2018年版の新三つ星の訪問を続けている。共著作に『東京ポケット・グルメ〈1992-93年版〉』(文藝春秋)、『ダイブル----山本益博の東京横浜近郊たべあるき』(昭文社)などがある。
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