ミシュラン三つ星をほぼ食べ尽くした男の忖度のない美食論

イタリアの山岳リゾートにある「サント・ウベルトス」、自然素材を生かした料理と多彩な演出を満喫

第9回 フジヤマの「ミシュラン新三つ星を追い求める欧州の旅」その3

文/特記なき写真:藤山 純二郎 12.18.2018

世界中のミシュラン三つ星レストランを追い求め、旅を続ける藤山純二郎さん。2018年9月には、新たに三つ星を獲得した3軒のレストランを訪問し、累計121軒の三つ星を制覇しました。藤山さんに美食論を語っていただく本連載の第9回は、2018年版のミシュランで新たに三つ星を獲得した、イタリアの山岳地方の町、サン・カッシアーノにある三つ星レストラン「サント・ウベルトス」の魅力を語っていただきます。

2018年9月に、2018年版のミシュランで新たに三つ星を獲得した3軒のレストランを訪問する旅に出かけた。最後に訪問したのは、イタリアの標高1500メートルを超える山岳地帯、ドロミテ渓谷の中でも特に美しいといわれるサン・カッシアーノにある三つ星レストラン「サント・ウベルトス」だ。

今まで121軒の三つ星レストランを制覇したが、この「サント・ウベルトス」は最もたどり着くのに苦労した。ひとつ前の訪問地のスウェーデン・ストックホルムから行くのに一番安く行けるいい方法は何か、いろいろ考えた末に、まずドイツ・ミュンヘン空港まで飛行機で行き、そこから国境越えの乗り合いバスでサン・カッシアーノに行くことにした。行きが6時間弱、帰りが5時間弱という長旅だった。しかも、行きはバスを1回乗り換え、3人の運転手と付き合った(笑)。帰りは1回乗り換え、バスの運転手は2人だった。行きは予定よりも1時間遅れて宿泊するホテルに到着したため、疲れてすぐに寝てしまった。

「サント・ウベルトス」は、LHW(Leading Hotels of the World;超高級ホテルだけで組織する団体)に加盟しているホテル「ローザ・アルピーナ」の中にある直営レストラン。ホテルとしてもミシュランに赤館4(特に魅力的で、極めて快適)で掲載されている。店名の意味は、「狩りの幸運を祈る」。もともとピッツア専門店だったのを高級レストランに改装し、2000年にミシュラン一つ星、2007年に二つ星、2018年に三つ星獲得となった。夏と冬のシーズン中のみの営業で、日本のゴールデンウイークは休業している。世話になった日本人女性コミパティシエ・小野貴代さんの話では、この立地のためか、日本人客は月に一組程度らしい。

「サント・ウベルトス」が入っているホテル「ローザ・アルピーナ」の正面玄関
三つ星レストラン「サント・ウベルトス」の入り口。トナカイのレリーフが印象的。しっかり三つ星プレートがディスプレイされている。上の写真はホテルの外からの入り口で、別にホテル内の入り口もある

イタリア人のシェフ、ノルベルト・ニーデルコフネル氏は、ミュンヘンにあったドイツの初代三つ星フランス料理店「オーベルジーヌ」や、ニューヨーク「ブーレイ」などに勤めたことがある。残念ながら訪問した日は、スイスのフェアに、イタリアを代表するパティシエでもある、シェフパティシエのアンドレア・トルトラ氏を含む3人で出かけているとのことで不在だった。

店に入ると、山小屋のレストランという感じで、気取らない雰囲気なのでリラックスできる。トナカイのレリーフが印象的な扉や、トナカイの角でしつらえた壁掛けなどが飾られており、「狩りの幸運を祈る」のモチーフが表現されている。

ラウンジにはトナカイの角でしつらえた壁掛けや置物が飾られており、山小屋の雰囲気を演出

レストランの中はとてもシンプルで、テーブルが9つと、厨房が見渡せるシェフズテーブルが1つあるだけ。壁や床に木をふんだんに使った温かみのある空間は、やわらかな照明の灯りとともにとてもくつろげる。

それでは、「食材を活かし、無駄なものは加えない」を旨とするシェフ、ノルベルト・ニーデルコフネル氏の料理を紹介していこう。

レストランは9卓とこぢんまりとしており、壁や床に木をふんだんに使った温かみのある空間

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