ミッドナイト・インタビュー

「2000万円が残金10万円になっていた」 Retty 武田和也 代表取締役・後編

聞き手:カンパネラ編集部/文:西本 美沙 /写真:的野 弘路 08.02.2017

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おいしいお酒を酌み交わしながら、注目企業の社長の本音に迫る「ミッドナイト・インタビュー」。今夜はRetty株式会社代表取締役の武田和也氏です。「Retty」は、2011年に実名制の飲食店口コミサービスとしてスタート。投稿者の多くは実名で登録していることが特徴で、20代から40代の男女を中心に月間利用者数は3000万人を超えるまでに伸びています。

武田氏は大学卒業後、インターネット事業を手掛けるネットエイジ(現ユナイテッド)に入社。3年で会社を退社し米国へ。1年後の2010年にRettyを設立しました。

前編では、Retty設立時の狙いや海外展開などのお話のほか、店のおすすめ情報を書きこむユーザーとの連帯感や、会社の行動指針などを語った武田氏。後編では、起業後の苦労、口コミサービス側から見た飲食店業界の実態、100名規模に育った会社のマネジメントのこと、そしてお店選びのコツなど、経営者としての実態に多方面から迫ります。

前編からの続き)

──飲食店の口コミサービスでは、ときに飲食店側とのトラブルが発生しています。

武田 Rettyは自分の好きなお店を投稿するサービスなので、飲食店さんからはあまり嫌われることはありません。たまに「隠れ家のお店だからサイトから情報を消して」と言われることはありますが、ほとんどないです。口コミで情報操作しているのではという話も聞きますが、実名で投稿してもらっているので変な投稿をすれば、その人の信用力が落ちてしまうモデルなんです。

ただ、もちろん良くも悪くもSNSの普及で個々人が影響力を持ち始めていますので、きちんと見ていく必要はあると思っています。

スタートアップよりも“激流”の飲食業界、変化への対応がすべて

──飲食店の人から「どうすれば愛されるお店になりますか」と相談を受けることはありませんか。

武田 美味しい・美味しくないだけじゃなくて、どうすれば愛されるかが分かると本当にいいですよね。僕なりの考えとしては、結局は僕たちの会社の指針としても掲げた「User Happy」という考え方を常に持てるかどうかだと思っています。一つひとつは小さなことでも、常にユーザーさんのことを考えて判断を繰り返すと、いつの間にか大きな差がそこに生じる。

腕が良くてもつぶれてしまうお店は非常に多いんです。ほとんどの飲食店は一度負のスパイラルに入ってしまったら、なかなか抜けることができない。飲食業界は1年で10%弱のお店が閉店すると言われます。本当に変化が早い業界なので、変われないところはどんどんだめになっていく感じがします。

例えば、今は食のジャンルの融合が進んでいます。ミシュランにも「イノベーション」というジャンルがあります。フレンチと和食がコラボしていたりします。5年前には寿司とワインという組み合わせは少なかったけれど、今ではどこでも見かける風景です。普通のイタリアンや和食というジャンルに縛られることなく、それらが互いに融合される変化が起きています。

結局はそこに対する行動力、具体的に言えば変化に適応する行動力がなければ生き残れないのかもしれないと思っています。飲食の世界は、いわゆるスタートアップ業界よりも変化が速いかもしれません。

──たくさんのお店を食べ歩いている武田さんから見て、「これは当たる」と直感的に分かるお店に共通している特徴はありますか。

武田 正直に言えば、分からないですね。ただ逆説的ですが、有名店出身のお店は結構、流行ります。でも本当にそれだけでいいのかと思うことはあります。寿司は特に顕著で、どこ出身ですと言うだけでお客さんが来る。それはそれでいいことですが、もっとそうではない観点で流行るお店が増えていかなければと思います。

ブランドのバリューだけじゃない、本当に美味しいお店もたくさんあるので、こうしたお店にもっとスポットライトが当たってもいいですよね。そうじゃないと、飲食業界は面白くならない。でも、以前よりそういう本質的な部分に光が当てられる傾向が強くなっている気がしています。

今の悩みは「ランチに誘ってもらえない」

──現在、社員は100名と増えて会社の規模も大きくなってきています。直近の目標は。例えば、株式市場への上場などは考えていますか。

武田 上場はしたいと思っています。上場は大きな投資をするために必要な手段だとは思いますが、会社の目標としては置いていません。

とはいえ、過去を振り返れば投資という面でつらい時期もありました。サービスを開始した最初の3年間はユーザー数が伸びなくて資金繰りが大変でした。口コミの数は着実に伸びてはいるものの、お金がどんどん目の前で減っていきました。

最初はサービスへの期待という面だけで投資してもらえますが、サービスが伸びていない時って本当に何もできないんです。

残金が10万円を切った時もありました。6年前、最初は親にお金を借りて事業を始めて、その後に2200万円の出資を受けたんですが、気づいたら10万円になっていた。ただ、幸いその後にベンチャーキャピタル(VC)のグリーベンチャーズを中心に1億円を調達することができました。今でも思うんですが、あの出資がなかったら、サービスは確実に終わっていました。

──そんな厳しい時期があったんですね。その後は順調にサービスが伸びていますが、武田さんが目指している社長像はありますか。

武田 僕は常にフラットな存在でいたいですね。でも最近入社する社員からは、どうもフラットに扱ってもらえないので、なんだか寂しいです。

100人規模の会社になったので、声をかけづらいのかもしれません。企業のフェーズとしては正しいのかもしれませんが、何も考えずに話しかけてご飯に誘ってほしい。「暇だから行こうよ」くらいのラフな感じで誘ってほしいです。

ただ社長業務としては、やり方を変えていかなければいけない時期に差し掛かっています。僕はそもそもスケジュールを詰め込みたいタイプなのですが、最近はあえて予定を入れないようにしています。自分が忙しくしている場合じゃないなと。

ここ数カ月で社員がどっと増えたんですけど、新しい人からすると会社の状況が分かりにくい。元々すべての情報がオープンな会社なので、社員が情報を取りに行こうと思えば取れる環境です。でも、この規模になると、新しく入る人にはどうしてもハードルが高くなってしまいます。

新しく入ってくれた人たちが早く活躍できる環境をつくるために、今はあえて業務は詰め込まず、会社の方針や今期の戦略の言語化を進めています。

ピルゼンアレイ