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「人生のコスパ」が高い新しい「酒場」の時代

文:須田 泰成 06.27.2019

5月18日から6月17日にかけて世田谷・経堂のイベント酒場「さばのゆ」にて開催された「カンパネラナイト」。様々な人や文化が交流するイベントを通じて見えてきたのは、これからの酒場の可能性だった。

若い世代の酒離れ・酒場離れが語られるようになって久しいが、飲食店の生存率が2年後50%と言われる現代において、酒場の経営はますます難しい。

「近頃の若者は酒場に来ない」と口にしがちな中高年の多くも、実際は、税金・社会保障費のアップなどに伴う実質的な所得減や将来への不安から酒場通いの頻度が減っている。部下や学校の後輩などを行きつけの飲み屋に連れて行き「次の世代と酒場をつなぐ」風習も稀になり、節約のため家飲みはビールから発泡酒に切り替えるのが現実だ。

その背景には勤労者の可処分所得の減少がある。庶民の財布の紐は固い。酒は飲み過ぎると健康面でもマイナスであり、酒場通いに費やした額や時間に見合うリターン(良いこと)を期待できず、コスパ(費用対効果)が悪いと考える人が増えている。

しかし、そんな厳しい状況にも関わらず、若い世代が新しく作った人気の酒場が景気の悪化に逆行するかのように全国に生まれ賑わっている。筆者は、将来の酒場文化をつくる「これからの酒場」と呼んでいる。

「これからの酒場」と目されるうちのひとつ、「けむパー」の外観

カンパネラで何度も取り上げた大阪・天満の燻製バル「けむパー」は、筆者が注目する「これからの酒場」のひとつ。JR環状線・大阪駅のお隣の天満駅から徒歩5分ほど。商店街の通行客は流れてこない。店の外には、やや殺伐とした阪神高速。しかし、そんな「けむパー」に毎日100人前後が訪れる。

「けむパー」の小林哲さん摩利子さんご夫婦

「うちは20代〜30代の若い女性のリピーターが多いです。ありがたいことに、通い続けると、このカウンターを自分の居場所だと感じたり、仲間ができたり、趣味の世界が広がったり、支払った金額に見合う楽しいこと、素敵なこと、長い目で見ると『人生のコスパ』のようなものが良いと思っていただけているようです」と話すのは、店主の小林哲さん。

小林さんの語る「人生のコスパ」という言葉。ここに「けむパー」繁盛の理由と「これからの酒場」の可能性があると見た。


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