特集

「爆買い」は今後20年続く!驚きのインバウンド事情

中国最大の旅行企業グループ・シートリップ日本法人梁社長に聞く(前編)

文:須田 泰成 01.14.2016

日本経済再生のキーワードとして注目を浴びている「インバウンド」。会員数3億人を誇る中国最大の旅行企業・シートリップに、中国人観光客の旅行事情や、日本に必要な受け入れ体制づくりを聞いた。

2015年度の流行語大賞が「爆買い」だったことは記憶に新しい。

同時にノミネートされた言葉の一つには、外国人観光客を日本国内に誘致することを意味する「インバウンド」がある。爆買いと含めて、あらためて日本経済における外国人観光客の重要性についての認識が広まった。

インバウンドが注目される背景には、少子高齢化の進行によって日本の未来が危ぶまれている現実がある。2014年3月に発表された国土交通省の試算によると、2050年には、日本の人口は、約9700万人にまで減少し、全国の6割以上の地域における人口は、2010年の半分以下になる。

人口が減るということは、当然のことだが、就業人口と消費人口が減ることを意味する。日本の経済力は衰え、世界の中における相対的なパワーも低下する。

一方、このインバウンドが、少子高齢化対策を含めた日本の活力アップの手段として注目されている。国民の数が減った分、観光客をはじめとする短期滞在の外国人を受け入れ、日本にお金を落としてもらおうというわけだ。インバウンドを振興することで、人口減少による経済的損失をカバーできるだけでなく、経済成長も狙えるという見方もある。

例えば世界一の観光大国フランスでは、年間の外国人観光客数が8000万人を超え、GDPの約7%を観光業が稼ぎだす。それに比べて日本は2000万人に満たず、インバウンドは発展途上である。しかし逆に伸びしろがあるという見方もできる。

そんな日本のインバウンドのカギを握ると言われているのは、お隣の大国・中国だ。そこでJFNのラジオ番組『日本カワイイ計画。』では2週に渡り、中国最大の旅行企業グループ「シートリップ」の日本法人社長、梁穎希(リョウ・エイシ)氏を招いた。

シートリップ日本法人の社長、梁穎希(リョウ・エイシ)氏

カンパネラとしても興味のあるこの内容、番組のダイジェストとともに、番組だけでは聞き切れかったエピソードも含めて、インバウンド最前線の話を聞いた。

来日できるだけの経済力を持つ中国人は約4億人

シートリップは1999年に上海で創業。2003年には米国市場ナスダックに上場し、現在は約3億人の会員数を誇る中国最大のオンライン旅行サイトを運営している。会員は北京、上海、深セン、広州など、沿岸部の比較的経済的に豊かな地域が中心である。スマートフォンで動作する旅行アプリからの売り上げだけで、1日当たり30億~50億円にもなるという。

シートリップのWebサイト

日本で事業を展開するシートリップ日本法人は、2020年の東京オリンピック開催が決定した2013年9月の翌年、2014年に業務を開始した。梁社長は、桜美林大学大学院を修了後、JTBのグループ会社で6年間、台湾や中国本土からのインバウンド事業に関わったエキスパートである。日本の京都、奈良、金沢などの古都をこよなく愛するという。

番組パーソナリティの篠原ともえ氏と、地域ニュースメディア「みんなの経済新聞ネットワーク」代表でもあるコメンテーター・西樹氏の2人を聞き手に、梁社長のインバウンドに関する興味深い話が始まった。

「いま中国では、団体ツアーではなく個人ツアーが人気の時代になっています。シートリップが業績を伸ばしている理由は、2012年に個人ツアーに対応したスマホ対応のアプリを開発して、それがヒットしたからです。現在、中国における個人旅行市場の68%のシェアを持っています。お客さまの70%が30代以下なので、これからの成長の余地も大きいです」

人々の暮らしが急速に豊かになる中、中国では、自分の好奇心がおもむくままに旅をする個人旅行がスタンダードになっている。さらに梁社長が口にした数字には驚いた。

「社内でよく話すことなのですが、いま中国の全人口約14億人の中には、先進国における富裕層の生活レベルにある人たちが約3000万人、先進国における中間層の生活レベルにある人たちが約1億人、中国で言う中間層の生活レベルにある人たちが約4億人います。ざっくりですが、日本に来られるだけの経済力を持つ中国人は約4億人いると見ています」

日本に来る経済力のある中国人が約4億人。日本の人口の約3倍という計算になる。

「今年、中国本土からの来客数は、約400万人でした。ということは、まだ1%しか来ていませんね(笑)。いま日本政府は、年間の外国人観光客数の目標を2000万人と設定していますが、その数字は、日本の観光の魅力、ポテンシャルを考えると、とても低いと思います。例えば、2014年にパリには7600万人、ロンドンには3500万人の外国人観光客が来ています。東京は、いま1年に1000万人くらいです。世界を代表する大都市だから、もっと多くてもおかしくない」

インバウンドの仕事をしながら日本全国を巡った梁社長の実感では、日本ほど観光に適した国はないという。日本には美しい自然、おいしい食事、社会の文化の多様性、高い国民のモラル、治安の良さなどの安全性があるからだ。

「この1年、弊社の業績の中で、いちばん伸び率が高い観光地は、日本です。しかも、リピーターが多いという特徴があります。日本に来る経済力がある中国人約4億人のうち10%が日本を好きになってくれたら、スゴイことになります」

話を聞いていた篠原ともえ氏が、「爆買いは、これからどうなるんですか?」と、質問。それに対して梁社長は、「爆買いは、今後20年は続くと思います」と答えた。

梁社長に質問を投げかける篠原ともえ氏

人口減少による影響が免れない日本。中国からの観光客をいかにうまく誘致するかが、重要なポイントになりそうだ。

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