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北海道のエゾジカ狩りに同行し、本物のジビエを食べてきた

文/写真:カンパネラ編集部 02.09.2017

「エゾジカとは偶然出会うものじゃないんです」。北海道のプロハンターによる狩猟を間近で見た。そのうえ、エゾジカ肉の加工販売業者による本物のジビエも食してきた。その味わいは、まさに大地のエネルギーの塊だった。

プロハンターと同行した

翌日、林さんが取り引きしているプロハンターの1人、Aさんの狩りに同行させてもらった。生活狩猟免許をもつハンターとしての活動は夜明けから日の入りまで。クルマで移動しながらシカを探す。1台の車が通れるぐらいの狭い山道を人間が歩くほどのスピードで移動。運転しながらシカを探すのだ。

「エゾジカとは偶然出会うものじゃないんです。いる場所にこちらから行くんです」

8月から2月。狩猟シーズンになるとAさんは毎朝、起きるのは夜明け前だ。天気予報を確認しながら、今日の山の天気を考える。気温、風の強さはどうか。その中でシカたちがどんな行動をするのかを想像する。

夜明けとともに水を飲みに降りてくるのか、昼近くまで寝ている場所でじっとしているのか――。シカたちのイメージが固まった段階で家を出る。

運転しながらでもシカを見つけることができる。音もない、植物や鉱物だけの静かな世界に獣が動けば、100m先だろうがおのずと浮かび上がって見える。

クルマを降り100mは離れた場所からでも銃を構え、首から上の部分を狙う。Aさんは100m以上先の50円玉ほどの標的を当てることができるという。また300mほど先の標的も距離、風向き、弾道などをとっさに計算して撃てる技術がある。どうすればそんなことができるのか――。

「ただ、息を吐く。そして吐ききらずに息を止める。そして最後の一息を吐きながら、引き金を引くだけだ」と笑う。真剣勝負で磨き上げられた感覚としかいいようがない。

Aさんは山に入ると食事はしない。「缶コーヒーぐらいは飲むんだけど、日の入りまでは食事をしない。自分の五感が鈍る気がするんだよね」「料理人よりも先にナイフを入れるのが、僕らハンターです。自然の恵みを丁寧に届けたい。その緊張感もある」

林さんのところに卸したシカや熊は誰がが購入したかが分かる。その店での評判、お客さんの反応を定期的に聞けるようになったことが、Aさんにとっては本当にうれしいことだという。

シーズン中、食事もせずにただひたすら運転を続け、想像した場所に待ち続けている。「仕留めることよりも、イメージ通りの場所にシカと会えるのが面白い。これは何十年やっても変わらない」

ちなみにAさんがおすすめのシカ肉の食べ方はみそ漬けだ。甘めの北海道みそにつけたシカ肉をささっと焼いたものがうまい。「いくらでもゴハンがすすむ」らしい。ぜひ一度試してみたい。

高い?でも納得してもらえるだけの手間をかけている

いまのところ、林さんのお肉は東京のフランス料理店、中華料理店などを中心に流通している。オフシーズンになると林さんは夫婦でミシュランガイドにも載るようなお店に連絡をしてはシェフたちに食べてもらっている。

林さんのところのお肉は一般価格よりも高い。2倍近くもする部位もある。料理人たちからは「値段が高い」と言われることも多いのだ。だが、そういう料理人たちには、機会があれば北海道の工場を見学してもらうようにしている。一度見てもらえれば、「これだけ手間をかけているならば、と納得してくれます」という。プロたちが納得するだけの挑戦を自分たちはしていると、林さんたちは自信を持っている。

■参考Webサイト
ポロワッカ

林 徹(はやし・とおる)
1974年生まれ、東京都出身。ポロワッカ代表、2012年、結婚・出産を機に東京都より奥様の故郷である北海道北見市に移住。2014年に看護士から転職し、食肉処理業のポロワッカを立ち上げる。また、2014年から北見のお祭り、「きたみワッカマツリ」の実行委員長に就任。きたみワッカマツリの開催に尽力している。ポロ ワッカのお問い合わせ  porowacca@gmail.com
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