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うどんもお菓子もハラール対応!ムスリムに優しい関空を見た

文:須田 泰成 02.18.2016

関西国際空港が、日本初の「ムスリムフレンドリー」な空港として注目を集めている。LCC便の就航数増加で、マレーシアやインドネシアなどイスラム教国の観光客が増えているためだ。

空港内4分の1の飲食店がムスリム対応

日本初のムスリムフレンドリーな空港を目指す関空の試みは、次の5本の柱を核とする基本方針にまとめられ、2013年8月に公表された。

(1)祈祷室の「拡充」及び「ニーズに合った機能の追加」
(2)飲食店・物販店(食物販)のムスリムフレンドリー化
(3)ホテル日航関西空港のムスリム宿泊客に対するケアの拡充
(4)空港内従業員に対するムスリムフレンドリーマインドの醸成
(5)関西国際空港におけるムスリム対応のPR

一連の条件を整えることで、関空をムスリムの人々の到着地点として優先的に選んでもらおうというのが狙いであった。

「関西空港に到着されたムスリムの方には、こんなパンフレットをご用意しております」

尾山さんの同僚である濱谷圭祐さんから「for MUSLIM VISITORS(イスラム教徒の来訪者のために)」というパンフレットを受け取った。言語は、日本語と英語のバイリンガル。

A3サイズの紙を四つ折りにしたサイズのパンフレットは、判読性を意識したシンプルなデザイン。主要な情報が掲載されている裏面の左上には、カタカナ読みにすると「ムスリム・フレンドリー・エアポート・フロア・ガイド」とある。初めて日本を訪れた人がこの文字を見ると、ホッとすることだろう。

内容は、3つの要素からなる。

第1は、空港内の祈祷室の位置を示すマップである。第2は、ハラールフードを提供する飲食店ガイドだ。

飲食店ガイドの内容は、いくつかに分かれている。まず、空港内の特別待合室などにハラール料理をケータリングする「ハラールミールサービス」に対応している飲食店が示されている。こちらは非常に敬けんなムスリム向けだ。

次に、空港内に68ある飲食店のうち、敬けんなムスリム向けのハラール認証を取得した店が、前述のうどん店を含めて3店舗示されている。

また、「ポークフリー・アルコールフリー対応」の飲食店が15店舗、案内されている。これらの店舗では、豚、豚由来食品、アルコールなどを含まないメニューを掲載したリーフレットを用意している。

このように関空では68店舗中18店舗、つまり26%がムスリムフレンドリーな飲食店となっている。

ちなみに、ポークフリーとアルコールフリーは、日本人の感覚よりもかなり条件が厳しく設定されている。ムスリムにとっては豚肉のエキスが少量含まれる調味料もNG、また料理酒やみりんを使った煮物などもNGだからだ。ポークフリー・アルコールフリーの商品は、専用のお土産売り場でも販売されている。

ポークフリー・アルコールフリー商品の棚

パンフレットの第3の要素は、宿泊サービスである。空港に隣接するホテル日航関西空港は、576の客室すべてにキブラの表示があり、礼拝に必要な衣装、礼拝マットなどの貸し出しも行っている。そして館内の日本料理と中華料理の店で、ポークフリー・アルコールフリーの菜食メニューが用意されている。

インバウンドのカギ握るムスリムフレンドリー

LCCのさらなる増便や、旅行ビザの解禁・免除の広がり、東南アジアの経済発展による中間層の拡大などを考えると、ムスリムの訪日者数は、まだまだ増えると予想されている。

2010年に約16億人だったムスリム人口は、2030年には約22億人になるという試算もある。なかでも人口の比重が高いのが東南アジアと南アジアで、この地域にムスリム全体の約6割が暮らしている。

外国人観光客を呼び込むインバウンドが話題になる中、関西経済圏ではアジア圏のムスリム向けの対応が喫緊の課題となっている。最近になってJR大阪駅、南海難波駅の近くの商業施設なんばCITYなどにも祈祷室が設けられた。また、ハラール認証を取得してムスリムフレンドリーを表明する飲食店やホテルも関西地域で増えている。

特に関西は東京に比べて、経済の落ち込みが比較的大きい。それだけに関空には、関西経済界からの大きな期待がかかっていたと推察される。

関空の取り組みは、関西経済圏だけでなく日本各地の観光拠点にとっても、「ムスリムフレンドリー化」の参考になりそうだ。

■参考Webサイト
関西国際空港

須田泰成(すだ・やすなり)
コメディライター/地域プロデューサー/著述家
1968年、大阪生まれ。全国の地域と文化をつなげる世田谷区経堂のイベント酒場「さばのゆ」代表。テレビ/ラジオ/WEBコンテンツや地域プロジェクトのプロデュース多数。著者に『モンティパイソン大全』(洋泉社)、絵本『きぼうのかんづめ』(ビーナイス)など。