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お客さんは「特定中数」、酒場を巡るコメディアンの生き様

ナオユキさんが示すSNSとLCC時代のワークスタイル

文/写真:須田 泰成 06.02.2016

全国の酒場でジョークを飛ばし、客を笑わせ、旅する男がいる。その男はスタンダップコメディアンのナオユキ氏。破天荒なまでに自由な働き方で生き抜いている彼の秘密に迫った。

酒場のおかげで自分の居場所と巡り会う

ナオユキさんは、1966年、大阪市生まれ。育ったのは、その頃は片町線と呼ばれていたが、現在の学研都市京橋から一駅の鴫野。雑多な人が集まる環境で、様々な大人たちを観察して育った。

1990年、お笑いコンビ「ダックスープ」を結成。ぼやき漫才で人気を博し、「上方漫才コンテスト優秀賞」「ABCお笑い新人グランプリ新人賞」などで高い評価を得たが、常に心の中に「いまの自分は、自分らしくない」という、違和感があったという。

「1999年にレインドッグスて店で『こういう場所でこうして独りで立って目の前のお客さんを笑わせるのが、自分らしい』と、思たんです」

2006年にコンビを解散後、スタンダップコメディー1本に。語る内容は、やはり酒場の人間観察の話が中心。

2006年にはアメリカのシカゴで、2007年にはイギリスのロンドンでも公演。本場の空気も吸ってきた。そして、2009年からはR-1ぐらんぷりでも知られる存在に。2011年には、ファイナリストとなった。

「これからどないしよかて迷てる時に、酒場でいろんな人と出会って助けてもろて。ほんで酒場でしゃべらせてもらうようになってからも、またいろんな人に出会って助けてもろて。今の芸の原点のひとつは間違いなく酒場ですわ」

一年に150から200もの酒場を巡りながら、それぞれのステージでマイクを握り思うことは、ただ1つという。

「ほんで昼間にあった嫌なことうっとうしいことを忘れてもらえれば。ぼくのネタを聞いて、一瞬だけでもそんなふうになってほしい。目の前にいる人の心を打つことができればと思てます」

昼間にあった嫌なことや疲れを忘れさせてくれる。そんなナオユキさんのライブの日は、どこの酒場も普段より大勢の客で賑わい、より多くの注文でもうかる。

「求められてるところに行くのが一番しあわせ。全国の酒場でしゃべって、みんなにええ感じになってもろて、店も潤って、俺も暮らしていける」

ライブの後は、カウンターでお客さんたちと打ち解ける。一度ライブを行った店では、ほぼ100%、「また来てくださいね!」と、言われる。北海道から沖縄まで、顔の見える店主や客とつながる縁の深い酒場や街は、着実に増え続けている。

ピルゼンアレイ