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極北のハイウェイ沿いは、野生動物と航空機の王国【ユーコン3】

Walk on the Wild Side:カナダ・ユーコン編 第3回 デンプスター・ハイウェイの光景

文/写真:谷口 潤 09.15.2016

北極圏に接するユーコン。日本から比較的行きやすい一方で、雄大な大自然を堪能できる。第3回は、木々が黄色に染まるデンプスター・ハイウェイを行く。そこは野生動物と航空機の王国だった。

ここは航空機の王国でもあった

ユーコンドライブでは動物以外にも楽しみがある。それは航空機やその滑走路を見られることだ。道中に、緊急用滑走路を兼ねた広い道があった。丘陵地帯が続くので、専用の長い滑走路を造るよりも道路を滑走路にするほうが手っ取り早いのだろう。

この場所が滑走路であることを示す看板。見晴らしのよい高台の直線道路が滑走路代わり

そもそもこういった緊急用の空港だけでなく、約100km置きに砂利もしくは芝生の滑走路がある。そばを通ると、セスナ機を使ってユーコン中を飛び回ってハンティングをしている方々が手を振ってくる。人間には1日に数名しか出会わないので、人影はホッとするし、こちらもすかさず手を振る。

軽く手を振ってくれるハンターたち

こうして出会うハンターの方々は、荒野の空をセスナで飛びまわって猟をしたり、フロート(浮き舟)付きのセスナを湖面に止めて、釣り&キャンプを楽しみながら湿地帯中をまわったりしている旅人だ。

ツンドラタイヤと呼ばれる極太のタイヤを履いたセスナ機は、砂利を敷いただけの滑走路でも難なく離着陸できる。しかし、このセスナを操れる腕前を持つ「ブッシュパイロット」は限られるので、チャーターしているのだろう。

ブッシュパイロットとは現地の職業の1つだ。彼らの多くはエアタクシーと言われる航空機会社に属している。空のタクシーとはユーコン独特である。これらの会社は自社のインターネットサイトにパイロットが空から撮影した写真を掲載しているのだが、これが息を飲むほど美しい。

ツンドラタイヤを履いた航空機。何げなく庭先に駐機していたりするから、飛行機好きにはたまらない。思わずコクピットを覗き込んでしまう

いずれにせよ、アラスカでは航空機が最適な乗り物であり、セスナでの旅はロマンいっぱいの体験になること間違いなしである。お気に入りの飛行場を決めたら、しばらくその土地でキャンプをしつつ、セスナで付近を大空から散策する。なんて魅力的な旅だろう。そんな旅人たちのために、フェアバンクスのような大きな空港ですら、飛行機の横にテントが張れるようになっているらしい。

ブッシュパイロットに転じた日本人戦闘機乗り

自衛隊F15の戦闘機乗りの方で、訓練飛行を行ったアラスカの大自然の美しさに惹かれ、ブッシュパイロットに転じた方がいらした。『アラスカ極北飛行』(須田製版)を書かれた湯口 公さんである。

この本を読むと、ブッシュパイロットの日常がわかる。また、燃料を貸してくれたり、プロペラをさりげなくヤスリで削って整えてくれたりと、アラスカのパイロットたちとの交流話も楽しい1冊だ。

アラスカ開拓史は航空機の発達史そのものだったらしい。道路を整備できない地形と気候ゆえに、航空技術の発展がそのまま遠隔地への物資供給のカギとなった。そのため、ブッシュパイロットはフロンティア精神のあらわれ、とある。

ユーコンにはエアノース(Air North, Yukon's Airline)という、ユーコン航路を専門にしたエアラインがある。点在する町、陸路では行けない村へ定期便をだしているのだが、オールドクロウ(Old Crow)という、陸路ではアクセスできない集落にもAir Northは連れて行ってくれる。いつかエアタクシーやAir Northに乗って、山あいの村や海辺に行ってみたいと思う。

エアノースのFacebookページにも、パイロットの撮影した美しい写真や旧型機の写真が満載なので、ぜひ見てほしい。眺めているだけで楽しい。

アラスカのトック(Tok)という街で給油をしていた時の話であるが、飛行機が突然ガソリンスタンドに入ってきて驚いたことがある。カヌーや船、バギー、自転車等をピックアップトラックで運んでいる光景は、北米ではよく見かけるが、飛行機をまるごと運ぶ様は初めて見た。飛行機が不可欠なこの地ならではの風景である。

分解され、トレーラーで運ばれる飛行機
カンパネラナイト