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「グラスに酒を少し残したまま居座る客」の深き問題

酒場から社会が見える・第4回:酒場でしゃべり続ける困った客…だが対処法はある

文/写真:須田 泰成 12.03.2015

酒場でグラスに少しだけ飲み物を残したまま延々としゃべり続ける客。こうした「困った客」が問題になっている。以前書いた「無料の水を頼む客」にも通じるこの問題、実態と解決策を探った。

以前、居酒屋で水(水道水)を飲み、アルコールドリンクもソフトドリンクも注文しない客が増えているという現象を取り上げた(こちらの記事)。実は居酒屋の店主やバーの経営者に話を聞いていくと、別の問題にも悩まされていることがわかった。

それは、グラスに数センチ飲み物を残してしゃべり続ける客の存在である。

『まだ飲んでます!』と1時間以上粘る

東京、大阪、それぞれ数軒の居酒屋、バー経営者に話を聞いたが、異口同音に「この数年、そういうお客さんが増えましたね」と語る。その多くが、ドリンクだけでなく、フードも1人で1品ほどを頼むだけ。それでいて長時間居続けるため、客席の回転が悪くなり、店の経営には痛手となる。タイミングが悪いと、他の客を断らなければならなくなる。

「うちで多いのは、40代~50代の女性のグループ。最初に生ビールをお出しして、1時間ほど経っても次のオーダーがない。見ると、全員グラスに3~4センチほどのビールが残ってる。泡も消えてるし、どうも見ても生ぬるくてウマくない。

お済みですか? と断ってグラスを持って行こうとしたら、『まだ飲んでます!』って、急にグラスを握りしめて少し口をつける。

その後もお代わりせずに1時間以上しゃべり続けて、フードのオーダーもナシ。10年前は、そういうお客さまはいなかった」

こう語るのは、東京は世田谷区内のダイニングバー経営者。

居酒屋で無料の水を注文する客の問題と同じで、席数の多いチェーン店なら、影響が小さいかもしれない。だが席数の少ない個人経営の居酒屋では、決して見逃せない問題だ。そういう客ばかりが集まると、店の経営危機に発展する可能性もある。

酒場でグラスに飲み物を少し残してしゃべり続ける客は、居酒屋で最初から無料の水を注文する客に比べると、「最低、一杯は頼む」だけマシなのかもしれない。しかし、居酒屋やダイニングバー、飲み屋など、店名からして「酒で商売をしています」ことが明記されている酒場においては、無料の水を頼むのと同じくらい美しくないマナーではないだろうか。

無料の水を注文する客よりも困った存在

「実は、グラスに飲み物を少し残してしゃべり続けるお客さまの方が、水を注文するお客さまよりも困ったケースが多いですね」

そう語るのは、大阪の梅田界隈の、ある居酒屋の経営者。水を注文する人は、支払いを安く済ませたいと思う一方、居酒屋の料理を楽しみたいという気持ちを持っていることが多いため、料理のオーダー数は多いという。しかし、グラスに飲み物を少し残してしゃべり続ける人は、多くの場合、フードもグループで1~2品。それも、箸を余りつけず、とにかく長時間ノンストップでしゃべり続ける人が多いのだという。

「グラスに飲み物を少し残す人は、飲むため、食べるためではなく、しゃべるために店に来るように見えます。

難しいのは、水を注文する人には『うちは居酒屋ですから困ります』と言えますけど、グラスに飲み物を少し残してしゃべり続ける人は、一応、注文してくださっているので、言いにくいんですよね。

心の中では、それやったら、もっと広い別の店もあるのにと思うこともありますけどね。うちみたいな小さな店に居座らんでも」

そんな飲食店関係者の言葉を聞いていると、飲み物をグラスに少し残す行為は、飲食店の経営や働く人の気持ちを考えずに、「快適なしゃべり場」を確保するための確信犯的な行為にも思える。

良心的な客にとっても、いい迷惑

店側にとっては、ストレスを感じる状況に違いない。注文してもらっている上に、「まだ飲んでいる」「まだ食べている」と主張されてしまっては、グラスや皿を下げるわけにはいかない。しかし、短い時間なら許容できるが、長時間座席を占拠されるデメリットは小さくない。

「混んでいて店に入れず、外で待っているお客様がいるのに、それを横目で見てわかっているのに、氷が溶けて薄まったお酒が2~3センチ残るグラスをチビチビ飲んで粘っている人を見ると、残念な気持ちになります。皆様に等しくお店を楽しんでほしいので」と、語るのは、大阪のJR天満駅の近くで営業する薫製バル「けむパー」の店主・小林哲さん。

このような状況の被害者は、店だけではない。酒場の雰囲気をゆるりと楽しみたい良心的な客も困る。心地良い店が経営危機に立たされたら、どこで酒場文化を楽しめばいいのか。

つまり、この問題は客にとっても決して他人事ではない。

我々はどのように対処すればいいだろうか。

ピルゼンアレイ