1600社余りの社史の企画編集に関わってきた出版文化社社長・浅田厚志氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム「危機に負けない長寿企業の経営に学ぶ」から、人気記事を転載する。今回は、長寿企業の経営と「家族主義」「実力主義」の関係性についてデータから読み解く。

長寿企業における「家族主義」と「実力主義」から学ぶこと
写真/Thomas stock.adobe.com
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長寿企業に意外にも多い「実力主義」経営

 長寿企業は、どのような経営を行っているのか。それを端的に理解するために、今回は「家族主義」と「実力主義」という経営の考え方を比較します。左から「家族主義」「やや家族主義」「どちらでもない」「やや実力主義」「実力主義」と5つのカテゴリーを提示して尋ねました。

 結果として調査対象の長寿企業328社では、「家族主義」は3%、「やや家族主義」は17%、「どちらでもない」は34%、「やや実力主義」は37%、そして「実力主義」は8%でした。長寿企業は「家族主義」経営が多いはずと思っていたのが、2つの「家族主義」傾向をあわせても20%、逆に2つの「実力主義」傾向の合計は45%で倍以上となり、意外な結果でした。

各経営主義の割合
各経営主義の割合
*以下、図表の出所はいずれも出版文化社。単位はすべて%。合計100%にならないのは小数点以下を四捨五入のため。

 この答えは、調査時点での経営者の考え方ですから、歴代の経営者がどのように考えたのかは分かりません。しかし、調査対象企業の平均経営年数は144年なので、明治から始まった長寿企業がずっと「実力主義」できたとは考えにくく、先人が行ってきた「家族主義」経営と、新しい時代の要請である「実力主義」経営の間を徐々に移動しているか、揺れ動いている心理が、「どちらでもない」という34%の企業を生み出しています。

2つの主義と利益率

 さらに当調査では、過去10年の経常利益率の平均が、どのような数字であったかを尋ねています。下表はタテ列を100%にして作成しており、経常利益率ごとに、どういう主義の企業が多いのかが分かります。

家族主義・実力主義×過去10年の経常利益率の平均(タテ比率)
家族主義・実力主義×過去10年の経常利益率の平均(タテ比率)
・赤字の列で最も多いのは「やや実力主義」(43%)で、「実力主義」(14%)と合計すると赤字企業の約6割に上る
・赤字と経常利益率の平均が2%以下の低収益率グループの列では、「実力主義」と「やや実力主義」が過半数を占めているが(「赤字」+「2%以下」の列の合計200%に対し、「実力主義」「やや実力主義」の2列の合計は102%)、「家族主義」「やや家族主義」の割合は低い
・経常利益率の平均が10%超の高収益率グループの列に「家族主義」はないが、「やや家族主義」はある(36%)。「実力主義」(7%)はあるが、「やや実力主義」(29%)のほうが多い
・経常利益率の平均が6%超を「経営が安定している企業」と考えて比較すると、「家族主義」も「実力主義」も「やや」がつく方が経営の成果は良い