1600社余りの社史の企画編集に関わってきた出版文化社社長・浅田厚志氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム「危機に負けない長寿企業の経営に学ぶ」から、人気記事を転載。本連載の最終回は経営の継承そのものの可否を考える。

その会社は経営を継承しなければならないのですか?
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哲学と資産の考え方が重要

 今回の連載は当初12回で長寿企業の経営スタイルと経営哲学をまとめる予定でした。途中で、昭和の経営者の話がとても人気があるという編集部からの情報があって、それならと、筆者が知り合った本田宗一郎氏(「本田宗一郎氏の人生とチャレンジ精神」)と稲盛和夫氏(「稲盛和夫氏の人柄に触れた40年」)の話を書きました。案の定、ご好評を得たそうです。筆者が会った有力経営者はソニーの盛田昭夫氏やワコールの塚本幸一氏、オムロンの立石一真氏など、実際に取材をしたり、お付き合いした方々が約40人います。そのエピソードは別の機会に譲るとしまして、本連載の最終回は経営の継承そのものの可否を考えることで、締めくくりたいと思います。なぜなら、長寿企業のベーシックな考え方として、企業は大きくなることよりも、長く続くことの方が社会貢献度は高いというものがあるからです。

経営の継承の是非を考える

 筆者が出版文化社の経営を始めてから39年目になります。今から9年前の55歳の時、65歳で社長を退くと社内で発表しました。筆者は自分の子供たちを当社に入れていません。後付けと思われるかもしれませんが、いつか会社の経営がままならない時代がやってくるのではないかと思っていたので、子供が社内にいて、家族優先の経営になると困る、と考えていたからです。それは案の定、新型コロナのパンデミックという形で当たってしまいました。

 当社では経営の継承を、創業者である筆者から二代目社長への個から個へとは考えていません。会社が小さい時から共に頑張ってくれた第一世代に支えられてきた思いが強いので、同じく次の代表者にも周囲で支えてくれるグループをつくる必要があると考えていたからです。これを「世代継承」と言い、第一世代から第二世代への経営の継承であると伝えています。

 1980年代、「日経ビジネス」は「会社の寿命」という特集で、発展してきた会社が衰えていく要因を調査しました。その結果を「経営者が変身努力を怠る」「経営者が無謀な多角化によって、企業の命を絶やす」という2つのポイントに集約しました。

 これを見ると、企業が生き永らえるポイントは、「いかに経営者をおごらせないか」と「どのようにして賢い経営を続けていくか」に絞られます。よって当社においても、経営者を取り囲む経営グループをつくり、経営者を補佐するメンバーを準備して彼ら彼女らに事業を継承することを考えたのです。これが長寿企業から学んだ、筆者なりの継承です。