衰退期に入る前から継承を始める

 ひとつの事業、商品、ビジネスモデルが企業を成長させてくれたとしても、それだけで次の世代に引き継げるわけではありません。遅くとも、そのビジネスを始めてから25年を迎えるまでには、次のビジネスモデルを開発して、市場に投入し、次世代の経営陣とそのビジネスモデルを共有しなければなりません。そして、30年を迎えるまでの5年、経営者の平均年齢で言うと、73歳から5年さかのぼる68歳ごろから次代の経営陣を育成して、5年で継承を終える、というスケジュールで進められれば、73歳で引退できます。

 こんな絵に描いたような継承スケジュールを実現するのは、簡単ではありません。それを現実のものとするためには時間、資金、ビジネスモデル、そして人材に余裕を持たなければならないので、筆者は引退の10年前の63歳、ビジネスモデルが始まって20年の、衰退期に入る前のピークの時こそ、経営の継承を開始する時期であると考えて、自身でもそのように準備してきました。

 私と共に会社をつくってくれた第一世代には、第一線を退いて、現場に戻ってもらいました。東京、大阪、名古屋のトップに次世代社員を就任させ、毎日、少なくとも30分は4人でコミュニケーションの時間を持っています。

 37年間の経営経験と、1600社余りの社史の企画編集に携わってきた出版社のトップとしての知見、そして大学院10年間の調査・研究成果をもとに、企業のDNAをいかに継承し、長寿企業へと成長していくのか、1年にわたって、読者の目線を踏まえて整理し、お伝えしたいと考えています。

(三菱UFJビジネススクエア「SQUET」より2021年4月15日掲載記事を転載)

浅田 厚志(あさだ あつし)氏
浅田 厚志(あさだ あつし)氏
青山学院大学総合文化政策学部 ACL特別研究員
出版文化社 代表取締役社長
1957年大阪府生まれ。出版社勤務を経て、84年2月、現・出版文化社を個人創業。以来、多くの単行本、定期媒体の企画・発行、社史・記念誌の企画制作、日米・日中・日印間の出版プロデュースを手がける。青山学院大学大学院博士課程と経営史学会にて「成功長寿企業の経営スタイルと経営哲学」を調査、研究。2015〜18年、青山学院大学総合研究所特別・客員研究員。
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