1600社余りの社史の企画編集に関わってきた出版文化社社長・浅田厚志氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム『危機に負けない長寿企業の経営に学ぶ』から、人気記事を転載する。今回は、現在のコロナ禍を企業の将来を考える大きなきっかけを与えられたと受け取り、将来に備えてここでの経験を記録することで、新たな力を得て組織の寿命を延ばすことにつなげようというお話。

コロナ時代の経験を、いかに継承するのか
写真/panadda stock.adobe.com
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危機で試される組織の生命維持力

 エイズはアフリカのチンパンジー、新型コロナウイルスは中国のコウモリが起源といわれています。野生動物に人類が接近しているいま、このようなパンデミックは今後も断続的に起こる可能性がありそうです。今回のコロナ禍の教訓をいかに記録し、後の経営に生かすか。これは企業を永らえさせる方法を考える、大きなきっかけを与えてくれます。

 2020年1月15日に初めて日本人患者から検出された新型コロナウイルス。世界的パンデミックとなって、さまざまな活動が一変しています。最たるものは、人の動きが止まったこと。それにより物やお金の動きも鈍くなり、観光業、旅行業、そして飲食業に大きな打撃を与えました。人が動かなくなったことで、逆に通販サイト、フードデリバリー、そして自宅での動画視聴サービスなどは需要が急増したようです。

 このような緊急事態にこそ、企業の生命維持力が試されます。先の長い企業経営を考えていくとき、パンデミックに相当する出来事として考えられるのは戦争や大地震です。戦争では人心が荒廃し、萎縮し、人々の消費意欲が減退。ぜいたく品や余暇、旅行などにお金をかけなくなって、経済が大きく減速します。それでも戦争に突入するまでには国家間の調整に時間がかかるので、まだ備える時間があります。

 一方、大地震となるとそうはいきません。10年前を思い出しても、さまざまな困難が見えてきます。社員を失ったり、経営者自身がけがを負ったり病を患ったり、経営意欲を失うこともあります。また、施設や設備を消失し、生産、販売の手段をなくすことがあります。その地域にある企業に存続の危機が訪れるのは間違いありません。

将来に備えて、コロナ禍の経験を記録する

 今回のコロナ禍は、東日本大震災のように局地型ではなく、日本全体を巻き込む災禍となったので、企業の将来を考える大きなきっかけを与えられたと受け取れば、いくらか前向きにとらえられます。

 下記は、会社の歴史を記録する時の視点を整理した表で、部門ごとに7つの要素に分けています。具体的にはこうしたものを利用して、縦列と横列のクロス部分の番号に則って、会社で行ったコロナショックへの対応の内容を記録します。

コロナショックへの対応記録
コロナショックへの対応記録
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縦1列:各部署で人、従業員、従業員家族などに関する事項を取り上げる
縦2列:什器、備品、設備など、物品に関する事項
縦3列:資金、賃金、借入、返済、経費、売上げ、原価、収益、仕入価格などに関する事項
縦4列:時間、就業時間、時間外、時間割、スケジュールなどに関する事項
縦5列:特許、商標、ブランド、技術・商品開発、業務運営方法などに関する事項
縦6列:情報共有、ITシステム関連、WEB関連、社内外への情報共有など
縦7列:経営理念、経営方針、目標設定、計画作りなど
※当てはまらない内容は空白でよい