経営者の日々の決断と言動が歴史をつくる

 社史の取材で経営者をインタビューしていて、驚くことがあります。ついしゃべり過ぎてしまうということです。ある飲食業の代表者に取材していた時、「実は、会社を売ろうかと思っている」という発言が飛び出して、絶句しました。隣に座っていた銀行から転身してきた役員も目を丸くして、筆者と顔を見合わせました。

 同社にとって最初で最後の社史の制作は、会社を売るために歴史をまとめておく、という目的があり、オーナー経営者が同社の歴史に向き合った大仕事だったのです。そして、事実、社史が完成して約1年後、同社はある飲料大手企業に買収され、明治以来重ねてきた独自の歴史を閉じました。

 今回のコロナ禍も含めて、経営にはいつ、何が襲いかかってくるか、わかりません。そういうイベントリスクは常に存在し、経営者は24時間、365日、それから逃れることはできません。コロナ禍は世界中の企業の歴史に大きなインパクトを与えることでしょう。

 経営権を預かっている以上、経営者は不退転の決意で日々に臨むしかなく、自らの経営を、歴史に恥じることのない内容にせねばなりません。日々の経営者の決断と言動が、歴史をつくっていることにほかならず、社史の発刊を考えるとき、歴史が経営者に迫る「勇気」こそ、会社を次の世代に渡す決意のもととなるのではないでしょうか。

(三菱UFJビジネススクエア「SQUET」より2021年6月14日掲載記事を転載)

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