1600社余りの社史の企画編集に関わってきた出版文化社社長・浅田厚志氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム『危機に負けない長寿企業の経営に学ぶ』から、人気記事を転載する。今回は「会社の寿命30年説」などを基に、長寿企業となるためにはどうすべきなのかを考察します。

「会社の寿命30年説」をどう理解し、経営に生かすか
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最盛期は30年続かない

 企業の寿命には諸説あります。もっとも有名なのは1983年に『日経ビジネス』が発表した「会社の寿命30年説」です。明治29年(1896年)以後、約10年ごとに日本のトップ企業100社の総資産額、さらに売上高を加えて分析した結果、この9期間に連続してランク入りした企業はわずか王子製紙だけで、この期間に413社が100社入りしたとのこと。ということは、1社平均で約2.5回ランキングに登場したことを指し、2.5回×10年は25年で、企業の最盛期は30年もたない、という結果を示しました。

 これは示唆に富んだ内容ですが、「会社の寿命30年説」と打ち出したものですから、多くの方に誤解されました。寿命というと、創業から没落までと解釈してしまいますが、ここでは企業の繁栄期間のことを言っています。「企業が成長段階から成熟、そして衰退期を迎えるライフサイクルは、何もせずに放っておく限り30年程度に過ぎない」(日本電気会長・故小林宏治氏)。この言葉どおり、1つの製品、サービスが顧客を捉え続けられるのはせいぜい30年です。しかし、企業の盛衰がそのライフサイクルに帰するようでは、ビジネスではあっても、経営とは言えないでしょう。

何を企業の平均寿命と捉えるか

 では、企業の平均寿命は何年なのでしょう。日本の2大調査会社である東京商工リサーチと帝国データバンクによると、2021年3月時点のホームページで前社は23.3年、後社は37.5年と発表しています。ずいぶんと開きがあるので調べてみると、前者は2020年に倒産した企業のうち起業年のわかる6591社の平均経営年数で、後者は同社のデータベースに登録されている企業の平均経営年数でした。命が絶えた企業とまだ生きている企業の平均には自ずと開きが出てくるでしょう。ただ、帝国データバンクの37.5年は同社に登録されているデータベースをもとに算出されているので、統計で重要な母数の大きさから言うと、こちらのほうに説得力があります。

 これに加えて、『日経ビジネス』の「会社の寿命30年説」が出回っており、ネット上にはさらに多くの見解が掲載されているので、どれをあてにして企業の寿命を考えればよいのか、戸惑いを避けられません。

 ちなみに、中国の企業は、筆者の2009年の調べでは2.6年が平均の経営年数だったのが、それから10年余りを経て、約5年にまで伸びてきているようです(2020年、中国国家工商行政管理総局)。勃興する企業数が多く、高い経済活力が維持されているのでしょう。企業の盛衰は社会の安定と深く関わっていることが、ここから読み取れます。

 このような平均寿命は、全業種の企業を母数として算出していますが、実際には業種によって、かなりばらつきがあります。東京商工リサーチの2018年の調査結果によると、平均寿命年数は、製造業34年、卸売業27年、運輸業26年、農・林・漁・鉱業25年、建設業24年、小売業24年、不動産業24年、サービス業ほか18年、情報通信業18年、金融・保険業12年となっています。製造業から先端的サービス業へと短縮化しているのがわかります。前述のように、これらは倒産した企業の平均経営年数で、業界別の平均寿命と言えます。これを超えられるかどうかが企業と経営者の能力の高さを表すと言っても過言ではありません。さて、あなたの企業はいま何年ですか。

 すでに超えている企業は、現在の会社の業績が成長期か、成熟期か、または衰退期に入っているのかを検討する必要があります。平均寿命を上回っているからといって、いまのビジネスモデルでこの後も大丈夫とは限りません。成熟期に入っているなら、急いで次のビジネスモデルを開発する必要があります。衰退期に入っているなら、いったん企業をスリム化して、低コスト経営で、財務基盤を安定させてから、次のビジネスモデルの開発に入っていくことをお勧めします。

 平均年数に至っていない企業は、まずは、この年数を超えられるビジネスモデルになっているかどうかを検討し、成長期、または成熟期でこの年数を超えられるなら、慌てることはないでしょう。しかし、衰退期にさしかかってしまうなら、急いでビジネスモデルの磨き直しをするか、次の商品を開発する必要があります。ただし上記の平均寿命年数は、コロナ後に大きく減少する可能性が高いことも付言しておきます。