失われつつある「豊かさ」を、次世代のために維持できるか

 続いて、図3を見てみましょう。これは、2020年時点のOECD(経済協力開発機構)諸国の平均賃金比較です。日本は真ん中より少し下の22位です。G7諸国と比較をしてみると、日本は、米国、カナダ、ドイツ、英国、フランスの後じんを拝し、6番目。日本の後ろにはイタリアのみが位置しています。

図3:OECD諸国の平均賃金比較(米ドル、2020年または最新利用可能年)
図3:OECD諸国の平均賃金比較(米ドル、2020年または最新利用可能年)
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 日本の中で普通に生活をしていると、毎日同じような風景が続いていきます。日常生活では、所得や価格の国際比較に触れることがありませんから、このような変化にはなかなか気づくことができません。しかし、これまで見てきた3つの図から明らかな通り、日本は、デジタル競争力の低下とほぼ並行する形で、GDP世界第3位の経済大国という「豊かな国」という看板からは程遠い「普通の国」へと、じりじりとポジションを下げていく方向にあります。

 日本は、一時期IT先進国とも言われましたが、平井卓也デジタル大臣の言葉を借りると、今や「デジタル敗戦国」です。DXの遅れは、コロナ禍で、特別定額給付金送付時の混乱や接触確認アプリ「COCOA」のバグ、書面・対面・押印といった古い慣行の存在、オンライン診療やオンライン教育の遅れ、キャッシュレスの遅れなどの形で露呈しました。

 しかし、より本質的には、DXの遅れは、中長期的な日本の国力低下につながる重要な問題だと認識すべきでしょう。日本は、過去の蓄積を使い切る前にDXを強力に推し進め、今や日々失われつつある「豊かさ」を、きちんと次世代のために維持できるかが問われているのです。

南雲 岳彦(なぐも たけひこ)氏 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 専務執行役員
南雲 岳彦(なぐも たけひこ)氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 専務執行役員
1966年生まれ。慶応義塾大学法学部卒、米ジョージタウン大学経営管理学修士、英ロンドン大学開発金融学修士、米スタンフォード大学上級プロジェクト管理プログラム修了。米コロンビア大学プロフェッショナル・フェロー修了。一般社団法人スマートシティ・インスティテュート専務理事、規制改革推進会議専門委員、総務省独立行政法人評価制度委員会委員、IPAデジタルアーキテクチャ・デザインセンター・アドバイザリーボードメンバー、京都大学経営管理大学院客員教授、エストニア・タリン工科大学客員教授、東海大学客員教授、金沢工業大学客員教授、国際大学GLOCOM上席客員研究員、豪ロイヤルメルボルン工科大学シニアフェローなどを兼務。
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