グローバルでは大きなマーケットである「国際公共調達市場」だが、日本企業の多くはいまだこの市場にアプローチできていない。そんな中で、一歩先んじた動きを見せているのがヤマハ発動機だ。国際公共調達市場に参入する意義や、具体的な取り組みについて、同社の日高祥博社長に話を聞いた。

©Riders for Health
©Riders for Health

国連調達で存在感を発揮できない日本企業

 「国際公共調達市場」とは、国連機関や国際機関、または新興国・途上国の公共機関が実施する物品およびサービスの調達市場のことだ。大規模な国際NGOによる独自の調達案件もそれに含まれる。中でも注目されているのが、国連機関等による「国連調達」。年間の調達規模は約2兆円で、そのうち約50%が物品の調達だ※1。ブランドバリューなども含め、新興国・途上国での海外販路拡大の足がかりとして期待されている。

 一方で、日本企業は独特の商慣習や新興国・途上国に対する知見不足、また国連調達市場自体の認知度が低いことから、なかなか食い込めていないのが実情だ。日本企業が国連機関による調達の総額に占める割合は、2019年時点でわずか0.7%である※2

 しかし、そんな中でも国連調達市場において大きな成果を上げている日本企業がある。アフリカビジネスの日本における先駆者であり、今なお先頭を走るヤマハ発動機だ。同社の日高祥博社長は「アフリカは今後の有望市場と捉えています。すでに52カ国で自動二輪車や船外機といった製品の販売やアフターケアサービスの展開を行っており、漁業やトランスポート、治安維持・救助、ヘルスケアといった分野で活用いただいています」と語る。

ヤマハ発動機 代表取締役社長 日高祥博氏
ヤマハ発動機 代表取締役社長 日高祥博氏

 同社のアフリカ進出は、1960年代に遡る。アフリカに向けたODA(政府開発援助)で、同社の船外機製品が選ばれたのを契機に、「売りっぱなしではいけない」と、現地のユーザーに船外機の使い方を教えたり、特約店における部品の供給体制やアフターサービス網などを地道に築いたりしたという。その後、自動二輪車の販売なども手掛けるようになり、91年には、事業部を横断して新興国ビジネスの窓口となる「海外市場開拓事業部」を設立。「世界の人々に豊かさと喜びを」というミッションの下、着実にアフリカ諸国でのビジネスを拡大していった。

 各国の特約店と提携し、チャネルを構築することで、一定の規模に到達。しかし、次のフェーズへ進むためには、新たな取り組みが必要だったという。転機となったのは、90年代に欧州の国連オフィスがアフリカ向けの資材調達を一本化すると決定したことだ。

 「我々としても、国ごとに設置されている国連オフィスの情報を入手し、それぞれに対応することは多大な労力を要することでした。国連が行う資材の集中購買をポジティブに捉え、さらなる成長のために国連調達市場への参入を決めました」と日高社長は語る。

 現在では、国連機関等を通じて数千台規模の自動二輪車をアフリカ全土に供給。主に道路環境が悪く四輪車が入れない地域などで、ワクチンや医薬品の配送などにも役立てられているという。

 「ワクチンや医薬品の調達では、製薬会社などにスポットが当たりがちですが、最終的にそれらの製品を現地の必要な人に届けないと意味がありません。空輸や現地での陸送だけでなく、注射を打つ人も必要です。そういったサプライチェーンの一翼を担うため、ラストワンマイルデリバリーの部分で弊社の自動二輪車を活用していただいています」(日高社長)

国連機関等が調達したヤマハ発動機の自動二輪車でワクチンを配達するスタッフ
国連機関等が調達したヤマハ発動機の自動二輪車でワクチンを配達するスタッフ

 同社は、アフリカ向け国連調達市場の中で確固とした地位を確立している。もちろん、それは一朝一夕の成果ではない。それでも、同社は課題を乗り越え、国連調達市場で成果を上げていった。その成功のポイントは、同社が現地で長年取り組んできたビジネスの中にあった。

(※1 出所:外務省)
(※2 出所:国連プロジェクトサービス機関UNGM統計、2019年)