前回の記事では、国連調達市場の先駆者であるヤマハ発動機の取り組みを紹介した。第2回となる今回は、中小企業にフォーカスを当てたい。産業廃棄物処理設備の専門メーカーである中和機工は、卓越した技術力と製品力をもって、すでに国連調達市場で着実に成果を上げている。同社の今尾邦明社長に市場参入の課題や取り組みについて話を聞いた。

国連調達に挑む(2)中和機工 今尾邦明社長「調達参入に向けコンサルの知見を活用」

国連調達市場への参入が遅れる中小企業だが、成功している企業もある

 国連機関等が、新興国・途上国の支援のために、物品やサービスを世界各国の企業から調達する「国連調達市場」。調達対象は輸送サービス、自動車、簡易住居、食料、医療機器、医薬品、建設機材、ITなど多岐にわたる。総調達金額は2011~19年まで右肩上がりに伸びており、国連システム全体の年間市場規模は約2兆円に上る巨大なマーケットだ※1。しかし、日本企業はこの市場で存在感を示せていないのが現状である。

 日本企業の参入・活性化のカギとなるのは、中小企業の存在だろう。中小企業は日本の全企業数のうち99.7%を占める※2。優れた独自技術やノウハウで、屋台骨として日本の経済を支えてきた一方、こと国連調達市場となると、知見やネットワーク、または社内体制の問題などから参入に二の足を踏む企業も少なくない。

 こうした中で、中小企業でありながら、国連調達を活用して自社の技術をアフリカに展開している企業がある。それが産業廃棄物処理設備の専門メーカーとして、煙が出ない無煙焼却炉などを取り扱う中和機工だ。

 同社の主力製品は、独自の無煙焼却技術を活用した焼却炉「CHUWASTAR」だ。今尾邦明社長は「炉全体が水で覆われた水冷構造で、高温燃焼に対する耐久性が高く、また、燃焼時の無煙化を実現しています。処理スピードの速さや、プラスチックやゴムなど雑多なものの混焼ができること、さらに焼却時に使用する水は温水として暖房や給湯に活用できる点なども評価いただいています」と語る。その特性から、感染性医療廃棄物の迅速で安全な処理にも活用されており、日本国内では約7000台、国外ではベトナムやスリランカなどの病院を中心に約460台の納入実績を持つ。

中和機工 代表取締役 今尾邦明氏
中和機工 代表取締役 今尾邦明氏

(※1 出所:外務省「日本における国連調達の課題と可能性。商機を逃さないために知っておくべきこと。」「国連の調達活動-入札プロセスと契約の仕組み-」)
(※2 出所:経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査」)

UNIDOと協力することで、アフリカに自社製品を導入

 今尾社長は、海外向けに事業を推進する際、大きな契機が2度あったと話す。「1つは13年に香港の国際環境展で実機を使用したデモンストレーションを実施した際の様子を、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルで取り上げていただいたことです。これにより我々の無煙焼却炉の認知が世界に広がりました。国内市場が縮小していた中で、東南アジアを中心に引き合いをいただけるようになりました」。

 そしてもう1つの契機が、JICA(国際協力機構)が実施した「モロッコ国 地方部の国公立病院と保健センターにおける医療廃棄物用焼却炉の導入に関する案件化調査」での採択だ。「調査の後は普及実証にも採択いただき、19 年にはモロッコにある2つの病院に焼却炉を納入しました」と今尾社長。この件が発端となり、中和機工はアフリカ市場へ目を向けることとなる。

 「それまで海外展開は東南アジアでの販売に注力していましたが、アフリカの市場規模の大きさに気づきました。ただしその時点では、経済水準の関係から現地の民間企業に『CHUWASTAR』を導入していただくのには限界がありました。アフリカで販路を拡大するには、公的機関の支援を活用する必要があると学びました」(今尾社長)

 そこで協力を仰いだのが、国連機関の「UNIDO(国連工業開発機関)」である。中和機工はまず、「STePP(サステナブル技術普及プラットフォーム)」の登録に着手した。

 UNIDOとは、貧困の削減や持続可能な環境を実現するために工業開発を促進する国連組織だ。STePPは、UNIDO東京事務所が提供する、新興国・途上国の持続的な産業開発のために日本の優れた技術を紹介するプラットフォームである。ここに登録することで、新興国・途上国にも広く自社の技術を周知することができる。

 20年には、UNIDOがSTePPに登録している企業の中から、 新興国・途上国の新型コロナウイルス感染症や様々な感染症対策に役立つ技術を持つ13社を選出。これらの企業の製品が、コロナウイルス等感染症対策支援として、新興国・途上国12カ国で採用された。中和機工の「CHUWASTAR」も、焼却によって感染症廃棄物の処理に有効とされ、マダガスカルとセネガルの2カ国に導入されている。

コロナ禍で現地に技術者が渡航できない中、中和機工はマダガスカルの病院関係者にリモートで焼却炉の技術・運転指導を行った
コロナ禍で現地に技術者が渡航できない中、中和機工はマダガスカルの病院関係者にリモートで焼却炉の技術・運転指導を行った