経営のディシジョン・メイキングに役立つ、ホットなトピックスやトレンド情報をお届けする「Special Report」。今回は、働きやすい職場環境づくり支援に取り組んでいる、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの朝生万里子氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム「『困った社員』の対処術」から、人気記事を転載する。

あの「困った社員」を何とかしたい
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はじめに

 昨今、「問題社員」「トラブル社員」「モンスター社員」などと呼ばれる、職場環境を乱す社員のご相談をよくお受けするようになりました。

 ご相談をお聞きしていますと、問題社員本人の資質によるのでは、と思われる事案もありますが、職場環境の悪化や労働条件の低下などから、会社との信頼関係が薄れたことによって問題が生じているケースも見受けられます。また、社内事情だけにとどまらない、少子高齢化などの社会問題から派生する育児や介護の問題を抱えているために、異動などに応じることのできない社員を、「困った社員」として対応されているケースもあります。

 このように、困った社員といっても、悪質なケースばかりでなく、「能力が発揮できていない」「(本人も困っている)事情があって会社に迷惑をかけている」など、その背景はさまざまで、どのように対応するかは悩ましいところです。しかし、会社としては理由がどうであれ、こうした社員を放置しておくわけにはいかず、時として毅然とした対応が求められます。

 組織である以上、職場で「人」に関するトラブルを完全になくすことは難しいと思われますが、事前に策を講じることでトラブルを避けることができ、生じてしまったトラブルの原因究明や対処の仕方によって、その後は同種のトラブルを防ぐことが可能です。

 ここでは、「困った社員には、厳格に対処すべき」と考えている係長に昇格したばかりの田中係長、仕事に意気揚々と取り組んでいる新卒入社2年目の中村さんと、「冷静な頭脳と温かい心」を持ちあわせる顧問社会保険労務士の岡田顧問との対話形式で、困った社員への対応を考えていきます。よりよい職場環境を構築するために少しでもお役に立てれば幸いです。

〈登場人物紹介〉

岡田顧問
顧問社会保険労務士。中堅・中小企業のさまざまな労務トラブルに対応できるベテラン社労士。初歩的な質問にも丁寧に答えてくれるため、質問しやすい先生である。

田中係長
人事部に配属されて約5年。先月、主任から係長に昇格したこともあり、やる気は十分であるが融通がきかない面もある。今回は、社内で生じる問題について、「会社のリスク回避」に焦点をおいて勉強しようと思っている。

中村さん
新卒入社2年目の元気な女性社員。やや情に流されがちであるが、働きやすい職場環境をつくることに役立ちたいと強く思っている。

田中係長岡田先生、私が入社した頃に比べると、無断欠勤やハラスメントなど、トラブルや問題行動を起こす社員が確実に増えているような気がします。

中村さん私の同期からも、同じ部署の社員について、「正直いってあの人、何とかしてほしい」という声を聞くことがあります。

岡田顧問「トラブル社員」「問題社員」などと呼ばれる人たちですね。どんな会社も抱えている難問です。

田中係長やはりそうですか。一般に優良企業といわれる有名な企業にも、こうした問題はあるんでしょうね。

岡田顧問もちろんです。ただし、問題に対する考え方や問題発生後の対応は、企業により異なることも多いようです。いわゆる企業文化の違いのせいかもしれません。

田中係長問題社員に対して、会社としては企業の秩序を維持するために、毅然とした対応をとらざるを得ません。懲戒制度の整備・拡充が必要だと思います。

岡田顧問確かにそれも1つの方法ですが、それだけでは企業経営のあり方として十分ではありませんよ。

中村さん社内規程違反となる行為や不法行為であれば懲戒制度も効果的かもしれませんが、「問題社員」と呼ばれる人の中には、うまく仕事を進めることができない方やストレスでうつ状態の方もいると思います。そのようなケースは、そもそも「不正行為」ではないので、懲戒制度は適さないような気がします。それに、一般社会の場合でも、罰則を強化したからといって必ずしも違反が減るとは限らないと思うのですが……。

岡田顧問そのとおりです。罰則の強化は、対策の1つではありますが、重要なのは、会社として社員が問題行動を起こさないような対策をとることです。さらに、仕事の進め方がわからない社員やうつ病に罹患(りかん)した社員については、会社として最大限サポートしていくことが求められ、「問題社員」として切り捨てればよいというものではありません。

田中係長でも、「社員が問題行動を起こさないような対策」なんて、本当に可能なんでしょうか。