実証フィールドの提供と独自の伴走プログラムが可能にする、成果につながるPoC

実証フィールドの提供について、どのような例がありますか。

杉原これまで4回実施してきたうちの第3期の例ですが、あるスタートアップが自社開発のソフトウエアを建設機械に搭載し遠隔操作を行う、という技術を開発しました。しかし、建設機械を借りて実際に操作する機会を確保するのは簡単ではありません。そこにLEAP OVERを通じて、自治体職員の皆さんが毎年行っている除雪作業を自動化したいという課題(ニーズ)を持つ岩手県滝沢市が、実証フィールドとして同市役所の駐車場を提供してくださいました。さらにパートナー企業である三菱電機さんが重機保管場所を手配してくださり、実際の作業環境を用意したことで、作業に必要な技術精度の向上に向けた開発を促進することができました。

 LEAP OVERは、持続可能な地域社会の実現に向けて不可逆なトレンドをテーマに設定していて、多くの自治体に共感していただき、協力自治体の数は日本最大級となっています。だからこそ、スタートアップにもさまざまな実証フィールドを提供することができるのです。

LEAP OVERは1期4カ月間とのことですが、そのプログラム内容を教えてください。

尾仲1カ月目はPoC計画書の策定とブラッシュアップ、2カ月目はその実施と結果の分析、3カ月目はPivot(方向転換)ないしPoCの深化を行い、4カ月目には成果発表として最終プレゼンテーションを行う「LEAP DAY」があります。月ごとにマイルストーンを設定し、スケジュールに落とし込み、定期的なメンタリングによるフォローアップをすることで、スタートアップがぶれずに、かつ着実に前に進めるよう伴走しています。

 PoCの成果を出すためにもう1つこだわっているポイントとしては、パートナー企業や協力自治体が解決したい課題の明確化と、それをLEAP OVERでどう実現するかの議論を、プログラム開始前に2カ月ほどかけて深く行っていることです。

 直近の第4期では、エントリー数は数百社に上り、採択企業6社のうち5社がPoCを実施しました。短期間で成果につなげることを重視したこのプログラムは、パートナー企業として参加している大企業にも高い評価を頂いています。

尾仲 啓祐(おなか けいすけ)氏 三菱UFJリサーチ&コンサルティング ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部 シニアマネージャー
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尾仲 啓祐(おなか けいすけ)氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部 シニアマネージャー
2010年三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、法人営業、企業調査・業界調査、スタートアップ支援企画などを経て、20年10月から現職。スタートアップ、スマートシティ、地方創生といったテーマによるコンサルティング・新規事業開発に従事。「MURCアクセラレータLEAP OVER」では第4期から事務局長を務める。

21年12月にエントリー締め切りが迫る第5期は最大規模の体制で臨む

第5期はどういう内容になりますか?

尾仲第5期のスタートアップ募集テーマは、「グリーンテック」「既存産業DX」「ライフ・ワーク改革」です。パートナー企業としては三菱電機さんと三谷産業のケミカル事業部さんに加えて、ウエストホールディングス(以下、ウエストHD)さんに新たに参画いただきました。三菱電機さんが総合電機メーカーならではの強みとスタートアップの持つ事業アイデアを掛け合わせることで社会課題解決に幅広く取り組まれる一方、三谷産業さんは環境ビジネスや化学品サプライチェーンの実現、ウエストHDさんは再生可能エネルギー開発や省エネ事業におけるイノベーションを目標にされています。

 スタートアップの審査のポイントとしては、経営者の魅力度、ターゲットとしている市場の魅力度、PoCにつながる可能性を特に見ています。スタートアップの方々には、次のステップに進むためにぜひLEAP OVERを活用していただきたいと思っています。

オープンイノベーションとしてほかにどのような取り組みをしていますか。

尾仲スタートアップが国内のビジネスコンテストや自治体の支援プログラムへエントリーする際の負荷を軽減する「STARTUP ENTRY(STAEN)」というウェブサービスを新たに提供しています。スタートアップにとって、ビジネスコンテストやアクセラレータプログラムはビジネスの可能性を広げる重要な機会ですが、書式の異なるエントリーシートをその都度作成しなくてはならず、また、自社にとっての最適なプログラムが分かりにくい状況にあります。STAENに一度登録すると、ボタンを1つクリックするだけで最適なプログラムに応募できます。また、プログラムの開催主体である自治体などにとっても、スタートアップを効率良く募集できるので、参加者集めより、本来の目的であるプログラム内容の高度化に注力できます。

杉原ほかにも2021年7月から一般社団法人スマートシティ・インスティテュートと協働でオンラインイベント「Monthly Pitch “7 minutes”~五方よしスタートアップが持続可能な日本をつくる!~」を開催しています。これは、スタートアップと、スタートアップ支援に取り組む全国の熱い自治体職員(STA-Mem47)とのマッチングをサポートするものです。スタートアップのピッチ後、「Let’s Connect!」の札を挙げたSTA-Mem47と連絡先の交換をしていただき、事業化に向けた一歩を踏み出せる仕掛けです。より踏み込んだ支援が必要な場合は、LEAP OVER で取り組んでいきます。

 こうした取り組みを通して、社会課題解決型のスタートアップの皆さんと共にこれからも持続可能な地域社会の実現のために努力していきたいと思っています。

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