経済の“いま”が分かる、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのエコノミストによる徹底解説コラム。今回は原油価格の動向について。ロシアのウクライナ侵攻と対ロシア制裁を中心に複雑に絡み合う要因を分析する。(D-Com編集部)

原油価格、高騰一服も高止まりか
写真/Who is Danny stock.adobe.com
[画像のクリックで拡大表示]

原油価格はロシアのウクライナ侵攻前から上昇傾向

 原油相場は一段高となっている。

 2021年12月2日には、米国産原油のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が1バレル62.43ドル、欧州北海産のブレントが65.72ドルの安値をつけた。しかし、その後は、変異ウイルス「オミクロン型」は軽症の傾向があるなどとして、新型コロナ感染拡大への警戒感が後退。世界景気回復による石油需要の増加や、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国からなる「OPECプラス」の増産加速に慎重な姿勢を受けて、原油価格は上昇した。2022年1月に入ると、ウクライナや中東での地政学リスクへの警戒感も加わった。

ウクライナ侵攻・対ロシア制裁で急騰

 そうした中、2月24日には、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し、ロシア産エネルギーの供給不安が強まった。先進7カ国(G7)は緊急首脳会議でロシアに経済・金融制裁を科すと表明した。25日には、米政権が対露制裁について、エネルギー市場に打撃を及ぼす意図はないと説明したことや、ロシアがウクライナとの協議に向けて代表団派遣の用意があると表明したことが原油の上値を抑えた。

 しかし、その後、相場上昇は加速した。西側諸国によるロシアへの金融制裁の強化等がエネルギー取引を制約するとの懸念や、欧米石油メジャーによるロシア事業からの撤退発表、日米欧などによる6000万バレルの備蓄放出の合意が不十分と評価されたことなどが相場を押し上げた。

 3月2日には、米政権は、ロシア産の原油や天然ガスを制裁対象とする可能性も示唆した。OPECプラスの「4月も小幅増産を維持する」との決定や、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が3月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅を0.25%にとどめる姿勢を示したことも上昇材料だった。

 7日には、ブリンケン米国務長官が前日に「欧州諸国と、ロシア産原油の輸入を禁止する可能性」を表明したことや、ロシアが、イラン核合意の再建交渉について、ウクライナ情勢が影響しないように要求したことが、ロシア産原油の供給減観測やイラン産原油の供給増期待の減退につながった。その結果、一時、WTIは130ドル台、ブレントは140ドル近くまで上昇した。