経済の“いま”が分かる、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのエコノミストによる徹底解説コラム。今回は加速するインフレについて。日銀の2%インフレ目標が達成される見込みだが、それは「悪いインフレ」の側面が多いと言えそうだ。(D-Com編集部)

インフレ加速、求められるのは「生産性向上」
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「良いインフレ」「悪いインフレ」とは?

 このところの円安の進展もあって、日本でも物価上昇が加速してきている。物価の動きを見ると、消費者物価指数(3月総合)の前年比はプラス1.2%、企業物価指数(3月)は同9.5%だ。川上の企業物価に比べ、川下の消費者物価の上昇幅はまだ小幅だが、昨年4月以降の携帯電話料金引き下げの影響を除くと2%を超えているとみられている。今年4月の消費者物価指数は、上昇率が2%を超えると見込まれる。

 これまで日銀は2%のインフレを政策目標とし大規模な金融緩和を続けてきたが、その思惑に反し2%のインフレは実現されていない。ここにきてようやく目標を達成しそうだ。

 インフレにはデマンドプル型とコストプッシュ型の2種類があると言われる。デマンドプル型は、景気が上向く過程で需要が供給を上回り、価格が上昇するというもの。コストプッシュ型は原材料価格などのコストが上昇することによる物価上昇である。「良いインフレ、悪いインフレ」という二元論では、デマンドプル型は「良いインフレ」、コストプッシュ型は「悪いインフレ」と言える。

 日銀が目指してきたのは、当然、「良いインフレ」であるデマンドプル型だ。大胆な金融緩和で先々の物価上昇を連想させることで、将来の投資の先取りにより需要を高め、物価の上昇を伴いながら景気を上向かせることをもくろんでいたと考えられる。

 しかし、実際には、大胆な金融緩和のみでは物価上昇期待にはつながらず、投資の先取りも十分ではなく、物価も思惑通りには上がらなかった。しばしば語られる「インフレは貨幣的現象である」との主張に反し、「貨幣量が増えただけではインフレが起こるとは限らない」というのが、この数年の結果であった。一方で「馬を川べりまで連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」との例え話のように、大量の貨幣を供給しても、企業にその気がなければ投資は実行されない。その結果、需要拡大からの物価上昇(デマンドプル型)にはつながらなかった。人々の期待や行動をコントロールするのは、そう簡単ではなかったということだ。