反動増と財政支援の効果はいずれ薄れる
もっとも、こうした回復は「コロナ前の姿に戻る」ということであり、「復興」の過程では反動増による高成長となるが、いったん元の軌道に復すると成長ペースは鈍化する。これもポストコロナの1つの側面であることに留意が必要だろう。
例えば、中国はいち早く感染を抑え込み、昨年第2四半期から経済は急速に回復した。ただ、コロナ前のトレンドにおおむね戻った今年は成長ペースが鈍化している。季節調整後の前期比成長率は、昨年の第3、第4四半期には3%を超えていたのが、今年1-3月期は0.6%、4-6月期は1.3%と減速傾向が見られる。巡航速度に戻ったともいえるが、今後は高齢化などの構造問題にどう対処していくか、中国の実力が問われることになろう。
米国も、今年の高成長は巨額の財政支援とコロナ下での消費減退からの反動増による面が大きい。バイデン政権はインフラ投資などもう一段の大型歳出を目指すが、議会協議での減額は必至で財政効果の低減は避けられまい。従って、これらの効果の剥落から、来年以降は米国の成長率も徐々に、2%弱とされる潜在成長率に近づいてゆくものと見込まれる。
「復興」だけではないポストコロナの持続的成長政略を
このように、中国と米国が先んじてコロナショックから立ち直り、日本ではその恩恵を受けて、製造業がまず回復基調にある。今後は日本でもワクチン普及に伴って非製造業の回復が期待できるが、その一方で、製造業の「反動増」に伴う成長は徐々にペースダウンすることになろう。
ポストコロナの局面が近づく中で重要なことは、ショックとその反動を経てコロナ前に復したところを起点に、構造変化を踏まえた新たな成長戦略を描くことではないだろうか。需要の反動増に期待するだけでなく、人手不足への対応や脱炭素への取り組みなど中長期課題への対処を含めた、持続的な成長戦略を実行していくことが企業には求められている。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 執行役員 調査部長
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