経済の“いま”が分かる、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのエコノミストによる徹底解説コラム。今回のテーマは、各国で導入検討が進む「中銀デジタル通貨」(CBDC)。デジタル通貨時代が到来すると、従来の取引慣行も大幅に変わってくる。これまでの信頼関係を損なうことがないように、早いうちから手を打って備えることが重要となるというお話。(DeCom編集部)

デジタル通貨時代への備えを
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導入検討が進む中銀デジタル通貨(CBDC)

 近年、中央銀行自らがデジタル通貨(CBDC=Central Bank Digital Currency)の発行を検討する動きが、各国で活発化している。CBDCとは、中央銀行が発行するデジタル通貨で、紙幣や硬貨などと同じ価値を有する電子的な通貨である。中央銀行が発行する法定通貨建てであることから、暗号資産のような使えなくなるリスクや価値が急減するリスクはほぼなく、“誰でも、いつでも、どこでも安全・確実に利用できる決済手段”となり得る。スマートフォンなどで支払いや送金を行えるようになり、利便性の向上や手数料の低下が期待されている。

 検討が進むきっかけとなったのは、米フェイスブックによる暗号資産「リブラ」(現ディエム)の発行計画発表である。フェイスブックの利用者である全世界28億人が使うとなれば影響は大きい。円やドルなど法定通貨の枠の外にあるリブラが全世界で幅広く利用されるとなると、各国の法定通貨の地位が大きく低下する。各国政府や中銀が享受してきた通貨発行益を失うばかりか、金融政策の有効性も薄れかねず、政府の地位さえも脅かしかねない事態となる。また、度々個人情報流出事件を起こし、システムのセキュリティー問題が懸念されているフェイスブックにおいて、暗号資産流出事件が発生すると、流出事件の規模は大きくなり全世界に甚大な悪影響を及ぼす。そうした危機感を各国は共有したものと思われる。