各国中銀のCBDC発行に向けた動き

 主要国でCBDC発行の検討は進んでいるが、特に、中国やスウェーデンでは、CBDC発行が現実のものとして検討されている。なかでも注目されているのが、中国人民銀行によるデジタル人民元の発行である。デジタル人民元の基本設計や標準策定は既に終了し実証実験が行われ、2022年開催の冬季北京五輪会場では、ホテル、スーパー、レストランや交通手段での導入が予定されている。実証実験結果もおおむね良好だったようである。

 こうした中国の動きを受け、他国の動きも活発化している。特に、米国は従来CBDC導入に慎重であったが、積極姿勢に転換し他先進国とも連携し始めている。具体的には、2020年10月、日米欧の先進国7中央銀行は、CBDC発行時の混乱を防ぐため、CBDCに関する3つの基本原則と特性の概要を提示した。各中銀はこの3つの基本原則や特性をベースに実証実験に入るなどの準備を進めることとなる。日本についても、日銀も既にCBDCの取り組み方針を発表し、2021年4月から2022年3月までの1年間を想定し実証実験を開始した。

 日米欧は依然として、「CBDCの発行計画はない」としているが、世界各国で、政府や民間レベルで検討が進んでおり、CBDCを発行する環境が整備されつつあると言える。

将来のデジタル通貨時代に向けて

 CBDCには長所・短所はある。しかし、ITの技術革新を止めることはできず、CBDCは今後も進展し、いずれデジタル通貨時代が到来すると思われる。各国はこうしたデジタル通貨時代に備えた体制の構築を急いでいるのである。

 デジタル通貨時代の到来はそんなに遠い未来の話ではない。こうしたデジタル通貨発行が始まれば、個人取引だけでなく企業取引でも急速に浸透していくであろう。民間取引においては、特に調達面においても、デジタルではない手形・小切手取引や現金取引が現在主流となっている。しかし、デジタル通貨時代が到来すると、こうした従来の取引慣行も大幅に変わらざるを得ない。これまでの取引慣行は、互いの“信頼関係”をベースとしているだけに、急激な見直しは相手との取引にひびが入る可能性もある。従って、これまでの信頼関係を損なうことがないよう、早いうちから手を打って、備えることが重要である。

廉 了(かど さとる)氏 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主席研究員
廉 了(かど さとる)氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主席研究員
1965年富山県生まれ。89年東京大学経済学部卒、同年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。日本経済研究センター出向、事業調査部、資金部、UFJホールディングス(現三菱UFJフィナンシャル・グループ)経営企画部、三菱東京UFJ銀行(三菱UFJ銀行)企画部、経済調査室などを経て、2015年6月から現職。著書に『銀行激変を読み解く』(日経文庫)、『日本版ビッグバン以後の金融機関経営』(勁草書房・共著)、『基礎から理解するERM』(中央経済社・共著)。
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