懸念される人手不足と供給制約

 21年には、コロナ禍による生産混乱の影響でサプライチェーン(供給網)の目詰まり、半導体など需要の急速な回復に伴う需給バランスの悪化が生じた。さらに、コンテナ船の運行遅延といった物流の混乱などにより、一部の製品で供給制約に陥り、景気回復の足を引っ張った。22年は、これに人手不足が加わり、せっかくの需要回復を妨げることが懸念される。

 コロナ禍における雇用情勢の動向を見ると、失業率はコロナ前の2%台前半から一時、3.1%まで上昇した。だが、その後は景気の持ち直しを受けて悪化に歯止めがかかり、感染拡大の第5波によって経済活動が抑制される中にあっても2%台後半と低い水準を保ってきた。これは、対面型サービス業で離職者が増加する一方で、人手不足感の強かったその他の業種での受け入れが進んだためである。

 22年には対面型サービス業で雇用を増やす動きが強まるだろうが、一旦、手放した労働力を再び集めることは極めて困難である。このため、人手不足で営業を再開できず、需要があっても供給力が追いつかない企業が増加する事態が想定される。中でもコロナ前に人手不足感が強かった宿泊・飲食サービス業では苦戦が予想され、供給制約が景気回復を阻害することが懸念される。

コロナ禍の教訓を生かせるか

 人手不足による生産制約を回避するためには、生産性を高めるしかない。幸いなことに、コロナ禍で、テレワーク推進、業務のリモート化、各種手続きの簡素化、ペーパーレス化、通信環境などのインフラ整備が、実験や細かいルールづくりを省略していきなり実践され、急速に浸透している。こうしたやむを得ず導入された制度や仕組みであっても、真に必要なものはコロナショック後も定着し、生産性を向上させるであろう。

 これらコロナ禍の逆境下で得た様々な教訓については、本来であれば短期間のうちに成果が得られるものではない。しかし、22年に労働需給がタイト化してきた局面でこそ、一定の効果を発揮し、生産性を高めることにつながると期待される。あとは企業がどの程度の危機感と覚悟をもって対応するかによって、景気回復の勢いも変わってくる。

小林 真一郎(こばやし しんいちろう)氏 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主席研究員
小林 真一郎(こばやし しんいちろう)氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主席研究員
1990年4月日本長期信用銀行(現新生銀行)入行、マーケット営業部に配属。98年7月長銀投資顧問年金運用部(現UBSグローバル・アセット・マネジメント)に出向、同年10月転籍。99年12月三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社、現在に至る。国内経済統括を担当、専門分野は日本のマクロ経済・金融。2003〜2011年度、東京外国語大学で非常勤講師を務めた。
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