この連載では家事代行サービス・ベアーズの高橋ゆき副社長が経営者の本音に迫る。今回の対談相手は先進の産業廃棄物処理会社、石坂産業の石坂典子社長。社会になくてはならない産業でありながら「3K(きつい・汚い・危険)」の代表と見られがちな産廃業を大胆に改革し、「地域から愛されるリサイクル企業」へと変身させた注目の経営者だ。コロナ禍にあえて推進するインナーブランディングや、未来に構築すべき循環型社会への思いを語ってもらった。
石坂産業 代表取締役社長
高橋ゆき氏(以下、高橋)西洋占星術では、2021年から情報や知識など形のないものが重視される「風の時代」が始まるといわれています。そういう時代を石坂産業がどう歩んでいくのか、今日は未来のお話もたくさんお聞きしたいと思います。
まずは足元の状況から教えてください。新型コロナウイルス感染症の収束しない状況が続いていますが、石坂産業の経営はどのような状況にありますか。その中で何に取り組んでいますか。
石坂典子氏(以下、石坂)コロナ禍でどの会社も厳しい状況にあると思いますが、弊社も同じです。この半年ほど、顧客数は落ち込み気味です。でも、私はこうした局面も「インナーブランディングの機会」と前向きに捉えています。情報共有のために社内報アプリを立ち上げるなど、新しいことに挑戦しながら社内体制の見直しを進めています。
この難しい状況で、大切にしているのが「衆知独裁」という言葉です。「みんなで議論するけれど、決断はリーダーがする」という意味です。コロナ禍では現場を見に行くこともなかなかできません。社員の声をたくさん聞いて情報を集めた上で結論を出すことが大事だと思い、この言葉を常に念頭に置いています。
高橋インナーブランディングは、とても大事ですよね。私も同じ意識を持っています。ベアーズでは会社の体幹を鍛えるという意味で「インナーマッスル」という言い方をしています。石坂さんはいつ頃からインナーブランディングを考え始めたのですか。
石坂石坂産業は3年ぐらい前から外から見られる機会が急速に増えるという状況がありました。そういう外向けのブランド価値の上昇にあぐらをかかないためにも、社内体制を強化することが重要だと感じていました。
社内課題を見つけ解決するプロジェクトチームを編成し、石坂産業の課題を列挙していったところ、技術面や社会人としてのマナー、モラルなど「社内教育の不足」に起因するものが多いという結論に達しました。そこで、今は特に若手社員の教育に力を入れています。
高橋実際にどのような教育を行っていますか。
石坂働いている社員たち自身が「こういう教育が受けたい」と求めるものを提供しようと、入社5年以内の若手社員にアンケート調査を実施しました。「新人時代にもっと教わっておきたかったこと」「今の自分に不足していると感じる教育」といったことを聞いて回答を整理し、半年かけて60時間ほどの新カリキュラムをつくりました。今年4月に入社した社員の教育から、全面的にそのカリキュラムを適用していきます。