社員を増やすことも取引先を助けることもESG

高橋すべての根底にあるのは、「ゴミをゴミにしない社会をつくりたい」という創業の思いであり、それを受け継いできて今の姿があるということですね。「Why we do」の意識を持ち続けることは経営者として本当に大事だと思います。その結果として、すべての事業がリサイクルにつながっている石坂産業は“愛の循環産業”だと感じました(笑)。今、石坂産業はプラントの省人化、安心・安全の推進などにも取り組んでいます。狙いは何ですか。

石坂産廃処理には過酷な現場もあります。危険な仕事はできるだけ自動化・AI(人工知能)化したいと考えています。東急建設と建設廃棄物を自動選別するAIピッキングロボット「IT-PiRo」を共同開発しました。このロボットは、中間処理プラントのラインに設置され、人の代わりに選別作業を担います。

東急建設と石坂産業が共同で開発した建設廃棄物を自動選別するAIピッキングロボ「IT-PiRo」
東急建設と石坂産業が共同で開発した建設廃棄物を自動選別するAIピッキングロボ「IT-PiRo」
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 IT化、AI化が進めば働き方も変わります。これまで産廃会社には「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージがあり、大卒の人材が入社することがまれでした。こうした産廃会社のイメージも少しずつ変化し、今では、大卒社員の人数も増えました。弊社に昨年入社した社員はロボット開発を担当しています。社内のネットワークシステムの運用も若い社員が担当しています。

 こうした取り組みは業界のイメージアップにもつながります。産廃業界でも、新しい働き方が可能だと理解されれば、これまでのマイナスイメージがプラスに転じる機会になります。

高橋石坂産業は本業で環境保全に貢献しつつ、地域との共存を図る里山保全事業を手掛けるなど先端的なESG経営を実践し、「地域に愛されるリサイクル企業」となっています。今、すべての企業にとってESG経営やSDGsが重要なテーマですが、「具体的に何をしたらいいか分からない」という声も聞きます。何かアドバイスはありますか。

石坂「ESG経営」というと、大きなことをしなくてはいけないと考えがちですが、できることは足元にもたくさんありますよ。例えば雇用契約を見直して正社員を増やすことだって、ESG経営につながります。パートやアルバイトばかりで正社員がごくわずかという社員構成は、企業のあるべき姿ではないと思います。

 自社よりも立場の弱い取引先をサポートすることも一種のフェアトレードであり、SDGsの目標である産業や経済の持続可能性を実現するための課題解決につながります。いざという時に簡単に取引先を切ってしまう企業が、一方で「海外で植樹活動をしています」と宣伝している。仲間を見捨てておいて、植樹を自慢するのは本末転倒だと私は思います。

 石坂産業が里山保全事業を手掛けるようになったきっかけは、工場から排出する二酸化炭素のオフセット*に「CO2排出権を買いませんか」という営業がたくさん来たことでした。その1つで提案されたのがモンゴルでの植樹。地域経済圏でビジネスを展開する石坂産業が、なぜモンゴルでの植樹でオフセットするのかと疑問に思いました。

 外国で植樹するよりも、自分たちの地域を助けることの方が重要だと思いました。その1つが里山の保全です。若者が東京に出ていってしまって里山を管理ができないという地元の人たちの悩みを聞いて我々がボランティアで手伝い始めました。その後、里山保全活動を持続するため事業化したのです。

* 経済活動や生活などで排出された温室効果ガスを、植林や森林保護、クリーンエネルギー事業(排出権購入)などの活動によって直接的、間接的に吸収する活動
リサイクル工場の周辺に広がる里山の保全事業に取り組んでいる
リサイクル工場の周辺に広がる里山の保全事業に取り組んでいる
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