家事代行サービス・ベアーズの高橋ゆき副社長が経営者の本音に迫る本連載。今回の対談相手は一口サイズのチョコレートで知られるチロルチョコ社長・松尾裕二氏だ。2023年に創業120年を迎える老舗メーカー4代目社長に30歳の若さで就任。海外にも進出してさらなる飛躍を目指す。「『あなた』を笑顔にする」というミッション実現に向けた組織変革や事業承継について聞いた。
チロルチョコ代表取締役社長
高橋ゆき氏(以下、高橋)チロルチョコは味のバリエーションが豊富で、パッケージも華やかで楽しいですね。私はよくカバンの中に入れて持ち歩き、お会いする人にお渡ししています。場の空気が和むのでとても重宝しています。
松尾裕二氏(以下、松尾)ありがとうございます。チロルチョコは「ミルク」「コーヒーヌガー」などの定番品や期間限定品など、累計500種類以上のフレーバーを販売してきました。現在は食品メーカーやファッションブランドとのコラボレーションやタイアップにも積極的に取り組んでいます。
高橋松尾さんは2017年に先代の後を継いでチロルチョコ社長に就任されました。すでに5年たちましたが、今はどんなことに力を注いでいますか。
松尾最も力を入れているのは従業員満足度(ES)の向上です。
私が社長になってまず手掛けたのは、会社のミッションとビジョンをつくることでした。チロルチョコにはもともと「楽しいお菓子で世の中明るく」という社是がありました。それをさらにかみ砕き、社員にも浸透させる必要があると考えたのです。
半年ほどかけて練り上げたミッションが「『あなた』を笑顔にする」です。「あなた」とは誰かといえば、第一に社員です。我々はお菓子を作る会社として、楽しい商品を世に送り出したい。そのためには、企画したり、作ったり、売ったりしている社員が「楽しい」と感じることが何よりも重要です。社員が笑顔で働き、良い商品を創る。その商品がお客様やお取引先を笑顔にする。チロルチョコに関わる人々に笑顔の連鎖を生み出したいと考えています。
こうしてミッションをつくった時、ふと「今の社員の笑顔レベルはどれぐらいだろう」と気になりました。早速、コンサルティング会社に依頼し、ESを測る調査を実施したのですが……。
高橋どんな結果が出たのですか。
松尾 ES調査は5点満点の評価で、一般的な企業の平均点は3点です。3.5点以上あれば優秀とされています。ところが当社は平均点にも届かなかったのです。正直ショックでした。当社の職場は、先輩後輩の関係なく、社員同士が気軽に意見を言い合えるフランクな雰囲気です。会議でも場合によっては笑いが出るほどです。自分としては「なかなか良い会社だ」と思っていたのです。それは全くの勘違いでした。経営者としての慢心を大いに反省しました。