34年ぶりにテレビの生放送を実現

高橋プロレスの歴史に新しいカルチャーを投入し、ファンの方たちとの接点を増やしたのですね。リングに上がるまでの苦労や努力、心の葛藤なども伝わり、人間性に触れられる。そういうプロセスはとても重要で、リングの上の戦いが一層輝き、チケットや配信の売り上げが増えるという好循環が生まれますね。

大張はい。それこそがデジタルのもたらした効果です。新日本プロレスが、カードゲーム事業を展開し、デジタルに強いブシロードの傘下に入ったことで、これまで力を注いできたプロジェクトが花開きました。

 放送メディアでの露出も重要です。コロナ禍でステイホームの状態にある人たちの中から新しいファンを開拓するには、「意図せぬ視聴機会」がとても重要だと考えました。プロレスの試合は、かつて「金曜夜8時」のゴールデンタイムに地上波放送で生中継されていましたが、近年は深夜帯に録画放送されています。スポーツはライブが一番ですから、リアルタイムに試合をお届けしたい。そうした思いがあって、私から粘り強くお願いして20年7月、34年ぶりにBS朝日での「金曜夜8時」生中継を実現しました。ファンが会場に足を運びにくくなっている状況で、テレビを通して試合の臨場感を味わってもらえるよい機会になったと思います。

高橋海外事業も積極的に展開していますね。日本のプロレスは海外にも受け入れられていますか。

高橋 ゆき(たかはし ゆき)氏 ベアーズ 取締役副社長
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大張新日本プロレスは世界最高だと思っています。多くのプロレスファンが、世界のプロレスを見て、最後は新日本プロレスにたどり着くと聞きます。世界の有名レスラーも「新日本プロレスで戦いたい」と続々と海を渡って来てくれます。新日本プロレスが多くの人から評価される理由は、選手の技術にあります。これは私の持論ですが、日本では学校で武道を習う機会がありますよね。今では必修科目で、世界的にも珍しい環境ではないでしょうか。つまり格闘技の経験があるファンの厳しい目があるのですから、低いレベルでは相手にされません。飛んだり跳ねたりする華麗な技もありますが、一見地味に見える基本の技や受け身こそが大切であり、それを選手がしっかり習得しているので日本のプロレスは世界中から尊敬されるのだと思います。その中でも、創業以来約50年間、道場を中心にその技術を継承し磨き上げてきた新日本プロレスは、簡単には模倣できない独自の強みを持っていると思っています。

 19年にはニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで大会を開きましたが、会場は満員になりました。日本のファンには当たり前のことも海外のファンには新鮮なようで、エルボーで「ワーオ」、張り手で「ワーオ」ですよ。「そこで盛り上がるのか」と驚くぐらいでしたが、基本的な技の1つひとつの迫力が、いつも見ているものと全く違ったのでしょう。