技術や市場を深耕し新たな製品に

高橋谷田さんは創業家の3代目社長として、体重計などの計測機器の開発・販売を手掛けてきたタニタを大きく進化させました。食堂事業に乗り出したほか、企業や自治体向けの健康づくりパッケージ「タニタ健康プログラム」を手掛けるなど、「健康をつくる」サービス業へと事業を広げています。そうした新事業をけん引してきたのは谷田社長自身が大変なアイデアマンでいらっしゃるからだと思います。どういうところからアイデアが思い浮かぶのでしょうか。

谷田どこからでしょうね……。あらゆることに対して“はす”に構えて見ているタイプなので、その性格がベースにある気がします(笑)。

高橋漫画やアニメがお好きと聞きましたが、アニメの登場人物に例えると誰が当てはまりますか。

谷田『SLAM DUNK(スラムダンク)』(井上雄彦、集英社)だったら、流川楓ですかね。

 例えば、料理を出されて「これ、おいしいですよ」と言われたら、多くの人は「そうですか」「本当ですね、おいしいです」となるでしょう。疑問に感じることは少ないと思います。私ははすに構えているから、まず「本当だろうか」と思う。それで実際に口にしてみて「確かにおいしい」と思ったら、「何でおいしいのだろう」と理由を探る方向に進みます。何かにつけて疑問に思って解析しようと因数分解するクセがついていて、どんどん追求していく感じです。それがアイデアを生み出す1つの軸ですね。

 もう1つの軸は、いかに楽をしながら仕事ができるかを考えていることです。

高橋スピードを追求することも含めて楽に仕事をするということですね。それは大事ですよね。私もいつもそう考えています。

谷田ある仕事に1時間かかったとします。作業を終えて「はあ、やっと仕事が終わった」と思うだけでは何も改善しません。「どうしてこの仕事に1時間もかかるのか。1分で終わらせられないのか。そうすれば残りの59分間は漫画を読んでいられるのに」という考え方をします。楽をするために仕事を改善したいと思います。その2つの軸ですね。

高橋なるほど。では、例えば新商品を開発する時には、どのようにアイデアを形にしていくのですか。

谷田まずは原則論に立ち戻ります。「水は上から下に流れる」というような物理法則とか、「1人のお客様向けよりも1億人のお客様向けの製品を作るべき」というマーケティング理論とか、原理原則から導き出します。

 多くの場合、全く新しいことに手を着けるというより、技術や市場を深耕する方向で進めています。例えば、私が社長に就任してすぐに開発したのが「ペットモード」を搭載した体重計です。これは業務用の体重計などにある「風袋引き」という機能を深掘りしたものです。「風袋引き」というのは着ている服の重さを引いて体重を測る機能です。この機能を応用すれば、小型のペットを抱いて体重計に乗り、その後に自分の体重だけを測ることでペットの体重を導き出せます。この機能を搭載した商品は、犬や猫を飼っているユーザーから支持されました。

谷田 千里(たにだ せんり)氏 タニタ 代表取締役社長/高橋 ゆき(たかはし ゆき)氏 ベアーズ 取締役副社長
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高橋原理原則に立ち戻ったり、深耕したりしながら開発するようになったのはいつからですか。

谷田ずっと前からそうやっていた気がします。振り返ると、そもそも小学生の頃から2代目社長だった父が持ち帰った試作品を見ては、いつもあれこれ意見を出していました。当時は、思ったことを言うだけでしたが、中学生以降は考えたことを紙に書いて父に渡すようになりました。当時立ち上げて間もないタニタのウェブサイトのツリー構造の改善策を提案したこともあります。こうした経験を通して、「どうすればより良い商品になるか」を考える力が自然に鍛えられたのだと思います。