家事代行サービス・ベアーズの高橋ゆき副社長が経営者の本音に迫る。連載第12回の対談相手はユーグレナ(東京都港区)の出雲充代表取締役社長だ。2005年設立の同社では光合成をする微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)に着目し、栄養価の高い食品や化粧品の製造販売のほか、バイオ燃料の開発も手掛けるなどビジネスの幅を拡大させている。バイオベンチャーの先駆けである同社は未来をどう切り開くのか、ビジョンを聞いた。
ユーグレナ 代表取締役社長
高橋ゆき氏(以下、高橋)「なぜミドリムシなのですか」「どうやってミドリムシで世界を救うのですか」──こういった質問を500回以上は受けていると思うので、今日は新しい話を伺いたいと思っています。出雲さんは、いつ、どんなタイミングで新しい事業や商品のアイデアが浮かぶのですか。私の場合は、月光浴をしているときです。
出雲充氏(以下、出雲)“How to invent”の質問はよく頂くのですが、“When”を聞かれるのは初めてですね。でも、この質問に答えた方が、イノベーションとはどういうことなのかをお伝えしやすいかもしれません。私の場合、リラックスしていて、かつ、刺激をうけたときです。たとえばお風呂に入っている際、シャワーの刺激を受けると様々なアイデアが浮かびます。もっとも、アルキメデスが「アルキメデスの原理」を思いついて「ユーレカ!」と叫んだのもお風呂でした。ですから、これは多くの人が実感していることだと思います。
高橋考えていたことがまとまるのですか、それとも、直感が降りてくるのですか。
出雲直感ですね。
高橋私と一緒ですね。その直感には「こういうものをつくりたい」というポリシーはありますか。
出雲「人と地球が健康になる」、つまり、人と地球が健康になって持続可能な環境になるのであれば、なんでもいいと思っています。
高橋毎日毎日、ずっとそのことを考えていて、リラックスしているときに刺激があると、アイデアが生まれるのですね。
出雲そうです。ああ、こうしたらいいのか、と浮かんできます。きっと刺激は凝集剤なのだと思います。普段は水の中に分子が分散している状態で、でもそこに凝集剤が放り込まれると、それが核になって化学反応が起こり、物質が沈殿したり発光したりします。これと似ていると思います。
高橋そのときの感情は喜怒哀楽で言うと何ですか。
出雲うーん、普段のインタビューとかなり違いますね。Whenときて月光浴ときて、今度は喜怒哀楽ですか。少なくとも、私の人生に私的な怒りの感情はありません。もちろん、バングラデシュにおける貧困のような理不尽に対する怒りはありますが、そもそも、子供の頃から一度も親に怒られたことがありません。
高橋素敵なご両親ですね。
出雲はい、仏陀レベルだと思います。怒ることは私にも私の弟にも良くないだろうと考えたのだと思います。怒られたことがないので、怒ろうと思わないのでしょうね。ほとんどが、楽しいことばかりです。