家事代行サービスのベアーズの高橋ゆき副社長が経営者の本音に迫る本連載。オープニングを飾るのはアイリスオーヤマの大山健太郎会長である。今回はその前編。コロナ禍における消費の変化や独自の開発手法「ユーザーイン」によるヒット商品開発の裏側について、存分に語っていただいた。

アイリスオーヤマ大山健太郎会長「日本の生活文化は世界に売れる」
写真/阿部勝弥
大山 健太郎(おおやま けんたろう)氏
アイリスグループ 会長、アイリスオーヤマ 代表取締役会長
1945年大阪府生まれ。64年大山ブロー工業代表者に就任。91年アイリスオーヤマに社名変更。仙台経済同友会代表幹事、日本ニュービジネス協議会連合会副会長、東北経済連合会副会長、東北大学総長顧問、復興庁復興推進委員会委員を務める。著作に『アイリスオーヤマの経営理念』(日本経済新聞出版)、『いかなる時間環境でも利益を出す会社』(日経BP)、『ピンチはビッグチャンス』(ダイヤモンド社)、『ロングセラーが会社をダメにする』(日経BP)がある。

高橋ゆき氏(以下、高橋)現在、世界中で新型コロナウイルスが流行し、私たち経営者は、あらゆることを考える時にもなっていると思います。リモートワークが一気に普及し、働き方や生活の仕方も大きく変化している状況です。大山会長は、こうした現状をどう捉えていらっしゃいますか。

アイリスオーヤマ大山健太郎会長「日本の生活文化は世界に売れる」
写真/阿部勝弥

大山健太郎氏(以下、大山)これまでの数々の不況は、いわば想定内で起こったことでした。例えばバブル景気の崩壊は、狂乱物価で土地の価格が上がっているとき、このまま続くわけがないと多くの人が思っていました。リーマン・ショックも、金利をどんどん下げていけばリバウンドが来るだろうと予測できました。東日本大震災についても、例えば宮城県では約60年に1回、大きな地震が起こるといった通説がありました。

 一方、今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、これまでの不況とは違います。まさに想定外。地球に巨大隕石(いんせき)が落ちたくらいの衝撃です。東京に一極集中している状況や、自分たちの働き方、生活、常識などを見直す機会になっています。

 アイリスオーヤマ(以下、アイリス)の本社は、宮城県にあります。製造機能と問屋機能を併せ持つ「メーカーベンダー」という独自の仕組みを構築し、国内に9工場、海外を含めると32工場あるグローバル企業です。日ごろから米国や欧州、中国、韓国などから日本の状況を複眼的に見るようにしています。そうすると日本は世界の中で、とても異質であることが分かります。日本の常識は世界の非常識であることが多い。その逆もしかり。片道1時間以上もかかる通勤は、海外ではあり得ません。

 こうした中で、今回の緊急事態宣言によって、日本では不要不急の外出を控え、自宅で過ごす時間が増えました。そこで世の中の意識がどう変化したかといえば、あえて通勤をしなくても、1時間以上かけなくてもよさそうだということが分かってきた。また、これはバブル崩壊やリーマン・ショックのときも同様でしたが、巣ごもり消費が増加した。消費のパターンも大きく変わったわけです。アイリスは「快適生活」をコンセプトに掲げ、園芸用品から収納用品、家電からお米まで多様な商品を開発してきました。そのため、この状況で私たちの快適生活を目指した商品が注目されているようです。

生活のあらゆるところにヒントはある

アイリスオーヤマ大山健太郎会長「日本の生活文化は世界に売れる」
写真/阿部勝弥

高橋なるほどアイリスとしては、幸い売り上げは伸びた。そうした点では、大山会長が「お米の販売の仕方について。お米を炊くときは2合、3合なのに、なぜキロ単位で販売するのか」とお話しされていたことが心に残っています。実際アイリスでは2合に小分けしたお米を販売されていて、アイリスが業績を伸ばしているのは、このような生活者目線で商品を開発する「ユーザーイン」のコンセプトを消費者が支持しているからだと思います。そこで伺いたいのですが、ユーザーインを定着させるために、どのような社員教育をしているのでしょうか。

大山社員には、ユーザーインを実践するには、自分が日々の生活をしながら不足や不満がないか、あらゆる角度から見ることが大事だと伝えています。「こうすれば見つかる」といった定まった方法はありません。生活のあらゆるところにヒントはあります。これを見つけようとする意識が重要です。