高橋ユーザーインは、自分を含めた生活者の行動を観察して、不満や不便といった課題を見つけ出し、創造性豊かなアイデアで商品を開発するという点で、「デザイン思考」と共通していると思います。アイリスの商品には、ユーザーへの温かい眼差しを感じます。今後は、どのような商品を開発していくお考えでしょうか。

大山日本は人口が減少し、市場も縮小していきます。そうした状況を踏まえ、今後は日本の生活者の不足不満を解決してきた商品、つまりそうした「ジャパンソリューション」を、米国や欧州、中国やアジア各国でさらに広めていき、日本の生活文化を世界に提案していこうと計画しています。日本の生活文化こそ、実は、世界に売れるものです。

 例えば、サーキュレーターはこうした商品の先駆けです。新型コロナウイルスの感染予防の観点から換気を良くするための世界中で必要とされています。当社のサーキュレーターは、日本と中国、韓国のみで販売していましたが、今は欧米にも出荷しています。しかし、供給が間に合わない状況です。

使い方提案でサーキュレーターがヒット

高橋サーキュレーターも「ユーザーイン」によって開発されたのでしょうか。

大山そうです。他のメーカーさんは、商品の機能とプライスを重視されています。私たちはそうじゃない。使い方です。他社のサーキュレーターはほとんどが「扇風機がわり」として販売されていました。サーキュレーターは、本来、室内の空気を循環させるためのもの。天井と床では温度は5度ほど違うので、エアコンと一緒に使うことで室内の空気が循環し、快適な温度を保つことができます。さらに省エネにもなります。そうした使い方を分かりやすく伝えたことで、需要が一気に増えました。扇風機は夏季限定ですが、サーキュレーター本来の機能を伝えたことで、季節問わず売れています。

 他にも、まだまだやれることは、たくさんあると思っています。例えば、今はテレワークが日常になってきていますよね。日本の狭い住環境に合わせた、小ぶりのデスクのニーズが高まっています。

 通常、デスクの奥行きは60㎝ですが、それを50㎝にしたデスクがあります。その売れ行きが、在宅勤務が広がった今年の3月以降、大きく伸びています。日本の狭い住環境からすると実は50㎝のほうがよかった。以前そうだったからといって、世の中には「絶対」はありません。今日の満足は明日の不満につながります。「絶対はない」という視点で生活を見渡すことで、新しいアイデアが生まれます。私は常々、社員にそう言っています。

アイリスオーヤマ大山健太郎会長「日本の生活文化は世界に売れる」
写真/阿部勝弥

高橋私も、経営者こそ生活や暮らしに主体的に参画すべきと思います。家事代行サービスなどを提供する会社を経営していて、これからは生活の不満や不安を何らかの形で解決することが企業にとって重要だと思っています。そうしたとき、企業にとって何が課題になるとお考えですか。

大山日本は世界の最先端を走っていて、日本の文化や生活者目線で考えた商品の全てが正しいとは思いませんが、世界に発信できるレベルに達していると思います。課題は、いまだに男性中心社会であり、ダイバーシティーの実現が十分ではないことです。早急に女性が活躍できる環境を整える必要があると思います。

 事業内容という観点で見ると、僕らは商品、高橋さんはサービスを開発してソリューションを提供している。ただ、どちらにも欠かせないのは、人です。ものをつくるのも、サービスをするのも、結局は人ですから。経営者としては、働く社員にとってよい会社にすべきです。もうけられれば何をやってもいい、というわけではないのです。

高橋会社の存続のために利益は必要ですが、基本は社員みんな、自分たちの幸せのために働くということですね。心にしみます。

文・構成/西山 薫

(第2回に続く)

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