家事代行サービス・ベアーズの高橋ゆき副社長が経営者の本音に迫る本連載。今回の対談相手は、アフリカ発のファッションブランドを発信するRICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)の仲本千津代表だ。カラフルで大胆な幾何学模様などのアフリカで伝統的に使われる柄をプリントした布を使い、バッグや服をウガンダにある直営工房で生産。それを日本の直営店やオンラインショップで販売する。この事業を通して、経済的に困窮しがちなアフリカ女性の雇用創出と自立を支援する。ソーシャルビジネスを手掛ける思いや今後の夢を聞いた。
リッチーエブリデイ代表
高橋ゆき氏(以下、高橋)RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)の商品は、どれもカラフルで個性的な柄がとても素敵です。これからの時代、好みのテイストのモノを集めて手元に置きたいと思う人は増えるでしょう。ファンは広がっていくと思います。そもそも、仲本さんはなぜアフリカ発のビジネスを手掛けるようになったのですか。
仲本千津氏(以下、仲本)もともと、私は高校時代に国連難民高等弁務官だった故緒方貞子さんの活動を知り、「こんな女性になりたい」と憧れていました。緒方さんが上智大学で国際政治を教えていたと知り、私は早稲田大学で国際法を、さらに一橋大学大学院に進んでアフリカ政治を専攻しました。その頃から、いずれはアフリカの社会課題解決に取り組みたいと思っていました。
大学院卒業後は世の中の仕組みやお金の流れを知ろうと金融機関に勤め、2年半後にアフリカで農業支援を行うNGOに転じました。そのNGOでウガンダに駐在した際、現地のマーケットで出合ったのが鮮やかな色と大胆なデザインのアフリカンプリント布です。「かわいい!」と心を動かされると同時に、「これでアフリカと世界をつなげるのでは」とピンときました。
ウガンダで、経済的に困難な状況に陥りがちな女性に雇用を創出し、自立を支援したいと思い、現地法人を設立し、直営工房を運営しています。さらに日本で母をパートナーにリッチーエブリデイを起業しました。商品は東京・代官山に開いた直営店やオンラインストア、全国の百貨店が開催するポップアップストアで販売しています。
高橋純粋に「かわいい」とときめきを感じたのが起業のきっかけだったのですね。
仲本「社会に良いことをしたい」という思いはありましたが、ビジネスは「かわいい」や「着てみたい」という消費者の根源的な欲求に寄り添うものでないと成り立ちません。今でも、自分が商品を見た時にどう感じるか、そして人に見せた時にどんな声が出るかを重視しています。その上で、社会に良いことをしていることを知ってもらい、ブランドを一層好きになってもらうのが理想です。
高橋お母様がビジネスパートナーというのは珍しいケースですが、どんな点が良かったですか。
仲本母は私にないものを持っています。一緒に仕事をしている中で、どんどんそのすごさが分かってきました。
母は30年間専業主婦をしていて、ビジネスには一切関わったことがありません。でも私を含め4人の子供を育て、父も祖母もいる家庭のすべてを回していたので、相当なマネジメントスキルがあると確信していました。実際、朝5時から夜12時まで、家族全員のスケジュールを把握した上でお弁当を作ったり、食事の支度をしたり、送り迎えをしたりしていたのです。家庭内で発揮していたマネジメントスキルは、今の仕事にも完璧に生かされています。国内の営業や検品を担当している上に、発注や納期にも細やかに目配りして「これ大丈夫?」と連絡してきてくれます。自分の思うまま道を開拓するのが私で、それをきちんと地固めして整えるのが母という感じです。