この連載では家事代行サービス・ベアーズの高橋ゆき副社長が経営者の本音に迫る。第4回の対談相手は素材系スタートアップで、企業価値が1000億円を超える「ユニコーン」と目されるTBMの山﨑敦義代表取締役CEOだ。世界で初めて、石灰石からプラスチックと紙の代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」を開発し、世界にサステナビリティー革命を起こそうと奮闘している。工場建設後に直面した最大のピンチや思い描く将来像などを語ってもらった。

山﨑 敦義(やまさき のぶよし)氏 TBM代表取締役CEO/高橋 ゆき(たかはし ゆき)氏 ベアーズ 取締役副社長
写真/陶山 勉
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山﨑 敦義(やまさき のぶよし)氏
TBM代表取締役CEO
1973年大阪府岸和田市生まれ。中学卒業後、大工見習いを経て、20歳で中古車販売業を起業。複数の事業を立ち上げる。2003年、欧州旅行で石造りの歴史的建築物が並ぶ街に感銘を受け世界規模の大きな仕事に挑むことを決意。2008年、台湾から石でつくる「ストーンペーパー」の輸入を開始。品質に課題があったことから2011年にTBMを起業し「ストーンペーパー」とは異なるプラスチックや紙の代わりとなる素材の開発に着手。現在に至る。

高橋ゆき氏(以下、高橋)新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。石灰石からプラスチックと紙の代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」の開発・販売を進めているTBMはどのような影響を受けましたか。

山﨑敦義氏(以下、山﨑)日本でも海外でも大きな影響がありました。日本では2020年4月から、大企業のベンチャー企業に対する税優遇制度がスタートし、当社にもいろいろと話が持ちかけられていましたが、多くがストップしました。中国では河南省で今年春、LIMEXの量産工場を着工する予定でしたが、これも一時的に止まっています。タイで財閥企業との間で進んでいた資本業務提携も仕切り直しとなりました。

高橋苦しい状況ですね。でもそういうピンチをあえて進化のチャンスと捉えることが大事なのでしょうね。こういう状況ですから、今まで変えられなかったことも変えやすくなります。ここで思い切って組織やビジネスの仕組みも変えていかないと生き残れません。

山﨑そう思います。当社も、コロナ禍では新たなチャンスをつかむための準備に時間を使っていました。大企業からの投資は難しいと判断し、4月以降は全国の個人投資家回りを中心にしていました。

 また、海外でのビジネスを進めるため、新たに商社に入っていただき、現地駐在員の方たちに売ってもらうようにしました。LIMEXは名刺、レストランのメニュー表、包装容器、プレートなど様々な製品に活用できます。それぞれの商社が、強みのある領域、地域でいろいろな企業と商談し、販売を拡大してくださっています。おかげさまで反応も良いですね。

山﨑 敦義(やまさき のぶよし)氏 TBM代表取締役CEO
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高橋それは面白そうですね。新しい商材が生まれるチャンスですから、社員の皆さんも張り切っているんじゃないですか。

山﨑みんな生き生きしています。グループ会社で生分解性プラスチックを手掛けるバイオワークスと共にに「バイオフェイス」というマスクも開発しました。石油由来の不織布マスクと違い、植物由来の素材を使用しているため環境負荷が低い。肌にも優しく抗菌性があります。

高橋コロナがあったからこそ生まれた商材ですね。このマスク、すごく手触りが柔らかい。おしゃれですね。

 私はコロナによって、地球が“強制シャットダウン”されたことにより、人々の志向が本質的なものに立ち戻った気がしています。自然、人間、未来……全部がつながっている。「ワンネス(oneness)」がキーワードだということに改めて気づかされたのではないでしょうか。これからは、製造業でもサービス業でも本質的なものを取り扱う企業でないと評価されなくなると思います。

山﨑そうですね。誰もが社会や未来に当たり前のように目線を合わせるようになったと思います。今までSDGs(持続可能な開発目標)などもどこか他人事だったけれど、すべて自分たちの経営や暮らしに直結すると痛感したのではないでしょうか。

高橋 ゆき(たかはし ゆき)氏 ベアーズ 取締役副社長
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