新型コロナウイルスの感染拡大やSDGs(持続可能な開発目標)の普及など経営環境の変化を背景に、中堅中小企業経営者は発想の転換が求められている。先の見えない時代では、既存事業の基盤を固めつつ、未来を先取りした事業戦略を立てることが重要になる。そのために必要となるのが、変化を予測する発想とビジネスモデルだ。国内外のビジネスモデルを研究している早稲田大学の井上達彦教授に、中堅中小企業におけるビジネスモデル構築の考え方と実践について聞いた。

井上 達彦(いのうえ たつひこ)氏 早稲田大学商学学術院 教授
写真/陶山 勉
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井上 達彦(いのうえ たつひこ)氏
早稲田大学商学学術院 教授
1997年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)。2008年から現職。経済産業研究所(RIETI)ファカルティフェロー、米ペンシルベニア大学ウォートンスクール・シニアフェロー、早稲田大学産学官研究推進センター副センター長などを歴任。主な著書に『ビジネスモデルがわかる』(日本経済新聞出版)、『ゼロからつくるビジネスモデル』(東洋経済新報社)、『世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑』(日経BP)がある。

新型コロナウイルス感染症が広がり、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGsが重要視されるなど経営環境が大きく変化しています。そうした状況で企業が導入すべきビジネスモデルはどのように変わっていくのでしょうか。

 コロナ禍は感染拡大の規模とスピードという意味では過去に例のない事態ですが、突如として現れた大転換点だとは思いません。パンデミック(世界的大流行)に限っても、21世紀に入ってから我々は、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)を経験しています。

 ほかにも経営に大きなインパクトを与えた事象としては、2011年に東日本大震災がありましたし、その前にはリーマン・ショック(08年)、米国同時多発テロ(01年)、阪神・淡路大震災(1995年)、バブル経済の崩壊(91年)、ブラックマンデー(87年)、プラザ合意(85年)など、実は5年から10年に1回は大きな経営危機に襲われているのです。

 ESGやSDGsについても状況は似ています。経営学者のマイケル・ポーター博士は以前からCSR(企業の社会的責任)の重要性を指摘していました。環境マネジメントシステムの国際標準規格「ISO14000」の導入も進んでいます。「企業と社会」というテーマは、突然現れたのではなく、以前から流れとしてあったわけです。

 大切なのは、世の中のトレンドを点ではなく線で見ることです。優れた経営者は、点をつなぎ合わせて物事を見て判断しています。そしてこうしたものの見方は、価値を創造し顧客に届けるための仕組みであるビジネスモデルを考える上でも重要です。