6つのパラダイムシフト、共通項は「脱物販」
そもそもビジネスモデルは経営にとってなぜ重要なのでしょうか。
2000年代前半にビジネスモデル構築の必要性が言われたのは、国内企業は稼ぎ方が下手だという観点からでした。日本は、技術力では世界トップクラスなのにビジネスとして成功していないのは、ビジネスモデルの構築に問題があるというわけです。その後、緻密に考えられたビジネスモデルは経営戦略を補完する重要な要素として考えられる、現在では投資や融資を受ける際に有利な材料としても見直されています。
大きな流れとして、今後、ビジネスモデルはどのように変化していくのでしょうか。
この20年のビジネスモデルの変化を捉えると以下の6つのパラダイムシフトがあります。
1. 自前主義からオープンイノベーションへ
2. 価値連鎖からプラットフォームへ
3. 物売りからサブスクリプションへ
4. 有料からフリーへ
5. 所有からシェアへ
6. 伝統手法からリーンスタートアップへ
これらの1~5までのパラダイムシフトに共通しているのは、物販からの脱却です。これまでは、高品質のモノやサービスを提供すれば、ユーザーから評価され、対価を得られるという考え方が信じられてきました。しかし、こうした考えが通用しなくなっています。それにもかかわらず、日本の企業は、こうした流れに十分に対応してきませんでした。
脱物販の方法の1つに、収益源の多様化があります。モノを売るだけでなく、関連するソリューションやサービスを販売する、手数料を取る、ネットで広告収入を得るといった方法が考えられます。さらにこれらを組み合わせて収益化のチャネルを増やしていくのです。
そして、6のパラダイムシフトは、開発手法に関するものです。完全な形の商品とビジネスモデルをつくり上げてから市場に投入する伝統手法に対して、これらが完成前の段階でも市場に投入し、仮説と検証を繰り返して、スピーディーに改善していくリーンスタートアップの手法が主流になっています。
ビジネスモデルは具体的にどのように構築するのでしょうか。
まず大切なのは、先ほど説明したように、世の中のトレンドを点ではなく線で見ることです。そうすることで、将来にわたって有効なビジネスモデルを構築できます。先のトレンドを読むには、それなりの手法を使う必要があります。過去から未来へのトレンドを理解するために便利なフレームワークに「ヤヌスコーン」があります。これは、米スタンフォード大デザインスクールが開発したもので、背中合わせに出口と入り口双方を見ている双面神ヤヌスになぞらえて、過去と未来のコーン(三角すい)で示すものです。
未来を予測するには過去を見なければなりません。そこで、自社に関係するテーマを選んで1年前、3年前、5年前などに起きた事柄を、付箋などを使って書き出していき、次にその軸を未来側に延ばして1年後、3年後、5年後などを予測するのです。