七転び八起き方式で「小さく・早く・賢く」

ビジネスモデルのアイデアを得るにはどうしたらいいのでしょうか。

 ビジネスモデルのイノベーションは自然に生まれるものではなく、多くの場合、他の業界や人材からもたらされます。つまり自社にないものを外部から取り入れることで新たなビジネスモデルが生まれるのです。そのためには、異業種から学ぶ姿勢や自社の既存事業がBtoCかBtoBにこだわらずに、発想する姿勢が大切になってきます。

 HEROZ(ヒーローズ、東京・港)というAI(人工知能)サービス開発会社があります。金融機関に対して株価をAIで予測したり、ゼネコンに対して一級建築士のスキルをAI化したりする、BtoBビジネスを展開しています。しかし、元はAIを搭載した将棋アプリの開発がメインのBtoCビジネスでした。経営者は、どうしても慣れ親しんだ業界や市場にとどまる傾向があります。土地勘があり、安心できるからだと思います。

 新たなビジネスモデルを構築し、事業領域を広げるには、慣れ親しんだ場所から飛び出す勇気が欠かせません。先述のエムールもそうでしたが、既存事業がBtoCであれば、BtoBへ、逆にBtoBであればBtoCへと踏み出していくことは、まず考えてみるべきです。

 新しいアイデアを得るという意味では、海外のスタートアップ企業を参考にすることも有効です。今、中国では政府の優遇政策もあって、多くのスタートアップ企業が誕生しています。中には動画配信アプリのTikTokのように斬新なビジネスモデルで急成長する企業も出ています。日本とは市場規模など大きな違いはありますが、彼らの大胆な発想から学ぶところは多いと思います。

自社にないものを外部から取り入れることは、長年一つの事業を続けてきた企業経営者には難しい面もあると思います。まず何から始めればよいでしょうか。

 確かに、限られた取引先や古くからの商習慣の中で長年経営してきた中小企業にとって、新しいビジネスモデルの構築はハードルが高いと感じるかもしれません。

 まず、従来の常識を捨て去ることを心掛けることから始めるのがよいと思います。それには、自分にとっての「当たり前」と思えることを書き出すことが効果的です。こうすることで、自分にとっての当たり前が顕在化し、そうではない別の考え方をするきっかけになります。「当たり前」が思い浮かばないという人は、「自社の強み」「自社が顧客や取引先から求められているもの」「先入観」を書き出してください。

 もう1つは、発想の逆転です。例えば、レストランを選ぶときの条件を考えてみましょう。「選択できるメニューが多い、充実している」という条件は普通に思い浮かぶでしょう。これはレストランの「当たり前」に相当します。これを単純に逆転させることで、当たり前を否定するのです。つまり「メニューが多い、充実している」を逆転させて、「選択できるメニューがない」レストランを強制的に考えることで、これまでにないアイデアが浮かんでくるのです。

 例えば、俺の(東京・中央)は、「レストランではゆっくり座って食べるものだ」という当たり前を逆転させて、立食を基本にしたレストラン「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」などを立ち上げて、成功しました。

 ビジネスモデルを構築し、実行のフェーズに入ったら、先述したリーンスタートアップが大切です。不確実性が高まっている時代には、「事前合理性・計画合理性」から「事後合理性・修正合理性」へのシフトが必要になります。要するに、仮説に基づいて小さく・早く・賢く市場への投入と改善を繰り返すこと。この方法で複数のビジネスモデルを実験的に運用することで、失敗を最小限に抑えられます。いわば七転び八起き方式です。7回転べば7回学ぶことがあるのです。そのうちに転び方も起き方も上手になっていくでしょう。失敗を恐れず、試作に挑戦することが、ビジネスモデルを構築し、成功に導く近道だと思います。

文・構成/寺島 豊

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