仕事を仕分けする際のポイントはありますか。

 いわゆるルーティンワークは自動化しやすく、リモート環境でできる仕事もあるでしょう。それに対して、ディスカッションをしてアイデアを出すような仕事は、雑談を含めたフェース・トゥ・フェースでの協働作業が有効です。

 また、社員間の信頼関係を築くことは仕事を進める上で重要なベースになりますが、これをオンラインで達成するのは難しく、やはり対面が基本になります。

 特に、チームを組んで仕事をする場合、最初は顔合わせをしておいたほうがいいでしょう。何かトラブルが発生して行き詰まったときも対面ですり合わせをしたほうがうまくいきます。ただし、将来的にVR(仮想現実)や高速通信規格「5G」などの技術が普及して、臨場感が飛躍的に高まれば状況が変わる可能性もあります。こうした技術の進化も横目で見ながら、柔軟に対応する必要があります。

企業は今後、社員の副業にどう対応したらよいのか

働き方に関しては、副業を手掛ける社員が増えていて、一部の企業が副業を認めるという変化も表れています。企業は今後、社員の副業にどう対応したらよいのでしょうか。

 社員が多様な働き方を望むという変化があり、企業側もそれをある程度認めるようになってきました。この状況は、仮に景気が悪くなって就職難になったとしても変わらないでしょう。定年まで1つの企業で働き続けた昔と違い、働く環境に満足できなければ、良い人材ほど離れてしまうからです。優秀な人材が働きたくなるような環境を整えることで、全体の満足度を高め、結果として企業の生産性が高まるように変えていくことが大切です。

 そこで、どのような形で副業を認めるかが問われます。休暇の取り方、副業・兼業の認可と範囲、リモートワークの仕方のほか、転勤を命じる権限などについても、従来の人事を根本的に見直さなければなりません。

 もちろん、副業・兼業を無制限に認めるのは避けるべきです。本業と利害が相反する仕事や、そもそも公序良俗に反する仕事など、明確に線引きする必要があります。本業がおろそかになったり過重労働になったりすることも避けるべきですが、逆に「他の企業に転職するかもしれないから認めない」といった働く側のモチベーションやキャリアを否定するような理由で制限すべきではありません。

 むしろ企業側では、本業の仕事をどうやって管理するかが重要になってきます。副業を容認する以上、単純に時間で管理することは現実的ではありません。仕事の効率や成果を評価し、管理していくことが求められます。

柳川 範之(やながわ のりゆき)氏 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
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「言わなくても分かるだろう」では伝わらない

副業の容認やリモート環境の広がりによって、企業への社員の親近感やロイヤルティーが薄れてくる可能性があります。こうした問題も経営者にとっては悩みの種ではないでしょうか。

 これまでの日本の企業には、朝から夜遅くまで皆が同じ職場で働き、時に社員旅行や飲み会に行くことで一体感を育むといった土壌がありました。しかし、今や社員の結束を固めることが簡単にできない時代になりました。では、経営者はどうすればよいのか。

 そこでは、これまで以上に、自分の会社についての思いや経営理念を積極的に語ることが重要になってきます。「こんなことは言わなくても分かるだろう」という考えは通用しません。経営者が機会を見つけて社員に語りかけなくては、理解もしてもらえません。副業やリモートが増える経営環境では、どれだけ自分の言葉で語れるかが、最も大切な経営者の資質になってきます。

 若い経営者は、こうした自分の思いをうまく語れることが比較的多いようです。これは、今の企業文化が若者のマインドセットに合っていることもあると思います。年配の経営者であれば、若者に迎合する必要はありません。自分が感銘を受けた経営者の言葉を紹介するなどして、とにかく語りかける機会を増やすことです。社員の心に訴えるには、経営者の熱意を示すことが何よりも大切だと思います。