コロナ禍によってリモートワークが広がるなど、働く環境は大きく変化している。その中で、社員の評価制度や人事制度を再検討しようと考える経営者も多いのではないか。リクルートグループで新規事業の企画・推進、人事制度設計、雑誌編集などに携わり、独立後も人事・雇用の専門家として多くの著作を持つ海老原嗣生氏に、今後の人事制度、ジョブ型雇用、採用について聞いた。

海老原 嗣生(えびはら つぐお)氏 雇用ジャーナリスト/中央大学大学院客員教授
写真/陶山 勉
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海老原 嗣生(えびはら つぐお)氏
雇用ジャーナリスト/中央大学大学院客員教授
1964年東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。その後、リクルートワークス研究所にて雑誌「Works」編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。リクルートエージェント社フェロー、政府労働政策審議会人材開発分科会委員、中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。近著に『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP)など。

コロナ危機によって働き方が大きく変わっていく中で、中小企業の経営者は今後の人事制度をどう考えていったらいいでしょうか。

 中小企業とひと口に言っても、形態や業態はさまざまです。定義上は、製造業その他では従業員300人以下の企業を中小企業と呼ぶわけですが、そのような規模の会社と、もっと小さい規模の会社では、人事の在り方が変わってきます。

 人事制度は、給料に公平性が保てない、納得性がない、といったときに必要になります。300人規模の企業で複数の部署があって、部署間の給料に差がある場合、公平性を担保する意味で人事制度があるのです。一方、50人以下の企業で、経営者の目が、従業員一人ひとりに届いているような場合は、厳格な人事制度は必要ないと思います。同様に、日々会社が成長しているベンチャー企業なら、固定化された給与体系が実態に合わないこともあり得ます。

 ただし、少人数企業であっても、代替わりの場合や創業家ではない経営者が就任した場合には、会社の実態を把握できていない可能性が高いので人事制度が必要となるでしょう。

従業員数150人が人事制度導入の目安

一般的な目安としては、どれぐらいの従業員数から人事制度が必要になってくるのでしょうか。

 私は150人だと考えています。あくまでもイメージですが、従業員が100人を超えたら人事制度はあった方が良い。150人になれば、重要になる。300に達したら必須、という感じでしょう。

 先述の通り、給与に対して従業員の不満が多いとか、代替わりした二代目にカリスマ性が欠けているとか、あるいは、外部から経営者が来た場合には、もっと少人数でも導入する必要があります。

 従業員150人というのは、部署数が増えてきて大企業の組織のひな型になる境界のタイミングです。これぐらいになると、従来は1つの部署だったバックオフィスが、経理と人事と総務に分かれたり、システム課ができたり、海外展開したりすることが多いでしょう。そうなると、社長の一存では給料が決められなくなり、きちっとした制度をつくることが求められるのです。

 また、優秀な経営陣や人事担当者がいれば納得性が保てるギリギリの範囲だと思います。聡明な社長であれば、150人全員の誕生日を覚えていたり、家族構成まで把握していたりするものです。社員の結婚記念日に花を贈ったりするかもしれません。ところが、人事制度には「社員の結婚記念日に花を贈る」なんて内容は普通定めないので、社長の目が届くうちは、むしろ制度はない方がよいのです。