人を大切にする会社──業績や損得ではなく、社員とその家族の幸せを重視する経営の重要性を長年訴えてきた坂本光司氏。多くの経営者に経営の原理原則を教えるとともに、日本各地を回り、その趣旨を実践する企業を発掘してきた。2021年3月に行われた「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の表彰に合わせ、中堅・中小企業がポストコロナを生き抜くための条件を聞いた。

坂本 光司(さかもと こうじ)氏
写真/陶山 勉
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坂本 光司(さかもと こうじ)氏
1947年静岡県生まれ。法政大学大学院教授等を経て、現在「人を大切にする経営学会」会長、千葉商科大学大学院商学研究科中小企業人本経営(EMBA)プログラム長、アタックスグループ顧問。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社1-7』(あさ出版)、『新たな資本主義のマネジメント入門』(ビジネス社)、『経営者のノート』(あさ出版)などがある。

新型コロナウイルス感染拡大が企業に与えた影響をどう見ていますか。

 これまでバブル崩壊やリーマン・ショック、東日本大震災などいろいろな経済ショックがありましたが、経済活動や社会活動が再開することで自然に世の中が良くなりました。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大による危機はこれまでと様子が違い、人々が活動すればするほど悪化していくという特徴があります。

 こうした敵が見えず、特効薬が見つからないという状況下では、「人を大切にする会社」つまり、社員とその家族、外注先・下請け企業の社員の幸せを優先する会社の存在がこれまで以上に大切になってきます。私の見るところ、普段から人を大切にしてきた会社は、コロナ禍においてもそれほど右往左往していません。資金的にも余裕を持って経営していたり、コロナ以前から在宅勤務や多様な働き方を導入していたりするからです。ある意味、コロナ危機は経営を考え直すいいきっかけになったのではないでしょうか。

坂本さんが会長を務める「人を大切にする経営学会」では、毎年「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を発表しています。今年度はどのような状況だったのでしょうか。

 この賞は、人を大切にしている会社を表彰するものですが、審査項目は、リストラの有無、障がい者雇用率、黒字経営、正社員比率、転職率、離職率など50以上あり、これらを高い水準でクリアする必要があります。2020年度で第11回を迎え、応募者は138件と過去最多でした。コロナ危機においても人を幸せにする会社は活力を失っていないことを実感しました。

 企業経営の真の目的・使命は業績や勝ち負けを競うことではありません。企業に関係する“5人”、すなわち①社員とその家族、②外注先・仕入れ先、③顧客、④地域社会、⑤株主を幸せにすることにあります。これが私の提唱する「五方良し」の経営です。

 この5人には優先順位があります。自社の社員や外注先の社員が喜びや幸福を感じるからこそ、仕事の質が高まり、顧客に満足を与えられるのです。その結果、利益が増え、地域社会や株主に還元できるわけです。株主の幸せは、社員の幸せであることの結果なのです。このコロナ禍では、こうした経営を日頃から実践できているかを問われるのだと思います。