中小企業の役員報酬は社員の4〜5倍まで

中堅・中小企業が「人を大切にする会社」になるには、どんな課題があるでしょうか。

 まず、社員の給料です。社員の平均年齢が40歳で時間外労働を除く平均年収が300万円台という会社は、人を大切にしているといえません。実際は、この水準の給与に据え置いている会社は少なくありません。

 一方、社長の給料が高すぎる会社も問題です。中小企業の経営者であれば、年収は1500万円から2000万円ぐらいまでが妥当です。およそ社員の給料の4〜5倍といったところです。これには根拠があります。社員は1日8時間働くのに対して、経営者は寝ている時間も含めて24時間働いていると考えます。また社員は年間240日前後働くのに対して、経営者は365日休まず働いていると考えます。これを年間労働時間に置き換えると、社員のおよそ4〜5倍という計算になります。これを上回る報酬を得ている場合、社員のモチベーションは間違いなく下がるでしょう。社員は、社長の姿勢を厳しく見ています。社長が平日からゴルフ三昧だったり、私用で使った費用を会社の経費で落としたりといった行動は慎むべきです。

 経営者には、「いい加減」ではなくて、何事にもほどほどの「良い加減」というのが大切なのです。私が訪問調査した会社は全国に8000社以上ありますが、社員の年収(時間外を除く)が300万程度なのに対して、社長の年間報酬が3000万円以上の会社はほとんどありませんでした。

 ある経営者は、コロナ禍で「仕事は激減したけれど、今こそ蓄えておいた資金を活用する時」と考えて、社員をリストラしたり、給料を下げたりしたりせずに、内部留保を取り崩しました。その会社の年間の人件費は2億円ですが、内部留保が10億円ありました。5年分の人件費に相当します。日本の多くの会社では、常に10割の操業でないと赤字になるという経営をしています。しかし、これでは今回のような状況が続くと持ちこたえられません。常に7〜8割の操業で維持できる経営、すなわち「腹八分経営」が大切なのです。

2020年度で第11回を迎えた「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の表彰式。審査委員会特別賞の賞状を手にする藤井電機の藤井洋平社長(左)と審査委員長の坂本光司氏
2020年度で第11回を迎えた「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の表彰式。審査委員会特別賞の賞状を手にする藤井電機の藤井洋平社長(左)と審査委員長の坂本光司氏
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障がい者雇用は利他の精神の現れ

障がい者雇用率を重視するのはどのような理由でしょうか。

 企業は社会的公器であり、地域社会へ貢献することが求められます。そのためには、経営者には自社の利益を追求するだけでなく、「利他の精神」が必要です。障がい者雇用は、経営者の利他の精神を推し量る重要な指標になります。「なぜ障がい者を雇う必要があるのか」と不平をこぼす経営者もいます。しかし、経営者自身やその家族が障がい者になるかもしれないことを考えるべきです。

 障がい者の雇用は法律で決められており、2021年3月に法定雇用率が2.2%から2.3%に引き上げられました。従業員が43.5人以上の会社は障害者1人以上の雇用が義務付けられています。我々が表彰する企業では、障がい者雇用率3%を実現しているケースも珍しくなく、しかも除外申請などせずに正社員として雇用しています。

企業では生産性を高めることも大切です。社員を幸せにすることと生産性を高めることは両立できるのでしょうか。

 会社の生産性と社員の幸せは密接に関連があります。社員のモチベーションが低い会社の業績は上がりません。逆に、社員のモチベーションが高い会社の業績は上がります。つまり、社員が会社で働くことに幸せを感じ、モチベーションが高まれば、生産性が上がり、業績も上がるのです。一方、社員をコストとして考えたり、社員に無理を強要したりすれば、社員はやる気を失い、そんな会社や社長のために頑張ろうと思わなくなります。

 言い方を変えれば「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」。満足度の高い従業員だからこそ顧客に満足を与えられるのです。CSが大切とよく言われますが、ESのほうがもっと大切なのです。